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脳が心を生みだすとき (サイエンス・マスターズ)

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本
ブランド: 草思社
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丁寧に解説した本 ★★★★☆
人間の心や意識がなぜ・どうやって生まれるのかについては、脳が関係することは明らかだとしても物質としての脳がどのようなメカニズムやシステムで精神的な事柄を「生みだす」のかは、現代の科学をもってしてもその手掛かりもないのが実情であろう。

偉大な物理学者で天才数学者のR.ペンローズでさえ、「脳細胞を構成する分子の量子的干渉が人の意識と関係するのではないか」としか述べていないし、極楽とんぼの自称脳科学者の茂木健一郎は、「数多くの他と区別されてとらえられるクオリア=質感があり、変わらず継続して意識する主体が私たちの意識というものだ」と訳のわからない説明で誤魔化している。

実際、一足飛びに分析が難しい「意識」や「心」は脇において、単に「目で見て物が見える」と言う状態だけを考えてみよう。光が物体に当たり、その光が我々の目に入ってくる。目の網膜でこの光の強弱と三原色に反応する視神経の電気信号が脳の視覚野に伝達される。ここまでは、理解できる。そして、脳は「実際そこにある物体と寸分たがわない状態で、その電気信号を目に見える風景として再構成し、リアルタイムで目に映し出す」ことをしている。すなわち、脳の視覚野で処理され構成されたモノ(映像)が、実際と寸分たがわずにそこに存在するように「見える」のである。ああ、なんて見えることを処理する脳は驚異的なんだろう。同じように、「聞こえる」や「触る」など五感や、「記憶する」や「計算する」「考える」などの全く無意識に我々が行っていることの一つ一つが、驚異的な脳の働きに依存しているはずである。そして、この脳が処理するメカニズムやシステムは、全く分かっていない。

その点でこの本は、10年前の本ではあるが、その時点で分かっている科学的事実に基づいて、丁寧に脳の化学物質と電気信号の複雑で巧妙なやりとりのどこから、心や意識、記憶が生み出されるのかのメカニズムを分かっている範囲で、丁寧に解説した本である。とはいえ、結局は、「1970年代以降急速に発展してきたが、脳を研究する冒険は、始まったばかり」という結論になっており、要は、「謎のまま」らしい。残念、今後の研究に期待したい。
内容が大変わかり易い ★★★★☆
訳本は基本的に読みにくいという印象が強いが、この本は違う。とても読みやすくなっている。1999年に刊行されているため、記述内容に関しては古いという感があるのは致し方ないと思う。作者・スーザン・グリーンフィールドの最新刊を読んでみたくなる、そういう本である。
この先の研究の長い長い道のりを思ってしまいました ★★★☆☆
 私の生きているうちには、脳の基本的な仕組みが一般人にわかったと感じさせることはないんだな、という気にさせられました。それほど研究の難しい分野なのでしょう。
 事故や病気といった断片的な事例をきめ細かく研究してきたことで、いくつかのヒントが得られたとおもいますが、攻めの研究に転じるきっかけさえつかめていないという感じです。

 近縁にある「遺伝」という分野と比較してみましょう。DNAの二十螺旋構造を解明したワトソンが書いた「DNA」を読んで感じたことです。この分野では、DNAの基本構造の発見が突破口になり、研究の方向性が定まり、地道な探索から攻めの実験に転じられたと思います。

 しかし、脳に関する研究の分野は、そのとっかかりがまだ見つかっていないようです。私たちはまだ「意識」や「心」といった高次の概念の扱い方もわかっていません。何を研究するのかの対象さえ定かではないのではないでしょうか。

 元々は、テレビ番組を意識してつくられたストーリーだという冒頭で紹介されています。なるほど、個々の事例が映像で紹介される様を想像すると、興味深いエンターテイメントになるだろうと思えます。しかし文と多少の図だけでは、その立体感をだせていないように思います。

一緒に考える本。 ★★★★☆
本書を読んでいると、著者が横にいて説明してくれているような錯覚におちいります。講義というより、一緒に考えていこうというイメージです。さらに、脳の歴史から最新の知見まで内容が豊富です。各章において、ある話題があったと思ったら、そこから派生して別の話題に・・。だから断片的な知識ではなく、広がりのある考え方が得られます。

内容は、入門書のレベルよりやや上で(難しい用語はあまりない)、範囲はニューロン、パーキンソン病、記憶、麻薬、など、脳に関する一般の話題がほとんどです。

ただ、情報が散らばっていて少し読みにくいかもしれません。また、教科書のように、この定義はこうで、というものでもなく、脳の雑学を知るものでもありません。そういう意味で、この本の位置づけは難しい。

だが、こういう本を読むことを読書というのだと思います。トリビアではなく、幅の利く考え方を得られる本。全部を通して考えながら読んでいけば、それがわかるはず。