完璧な定点撮影
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数十年の時を経て変化する東京の街角を撮影したいわゆる定点撮影の技法を用いた写真集は数知れない。しかし、ここまで厳密かつ完璧に「定点」にこだわり、それを実現したものは非常に少ない。完璧な定点撮影にはまず、過去の写真の撮影ポイントを出来るだけ正確に見極めることと、同じ焦点距離のレンズを使用することの両方が必要になる。この本に出てくる写真はほぼ完璧に「同じ場所」「同じ焦点距離」を実現している。おそらくほとんどの写真で、カメラの位置の誤差は数十センチ以内に抑えられているはずだ。しかも、都電の位置に都バスが入るようにタイミングを見計らってあり、雪景色には数十年後の雪景色が収められている。著者およびスタッフの執念には頭が下がる。