美術解剖学の実習書としても最適だと思います
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この書籍は、SYBEX 出版の ZBrush シリーズの書籍で、既にボーンデジタル社より訳書が出版されている『ZBrush 入門編』や『ZBrush キャラクタークリエーション』と同じように、実習スタイルの ZBrush 解説書です。
レベル的にも順番にステップアップしていて、それぞれの書籍は、前のステップの書籍の知識をある程度前提として書かれています。
ZBrush 関係の書籍では、オドロオドロしいクリーチャ―系の作例が多いのですが、本書ではリアルな人体造形にテーマを絞っていて、骨格モデルの作成を行ってから筋肉を加え、皮膚を作り上げていきます。
解剖学的な知識を重要視したダビンチを思い起こさせるアートスタイルが全編を通じて貫かれています。
美術解剖学の書籍では、医学分野の解剖学書からの知識を借りて、部分的な解説をしているだけのケースが多いようにも感じられますが、本書では実際に ZBrush を使って様々な角度から形状を確認しながら造形を行っていくので、必然的に細かな構造をじっくりと観察することになります。
美術系の大学はもとより、医学の解剖学の分野においても、とても高いデッサン力が要求されますが、これからの時代は、鉛筆だけでなく ZBrush を使った3Dデッサンによる解剖記録も重要になってくるのではと予感させてくれます。
『ZBrush 入門編』の頭蓋骨を作成する章でも、著者の Eric Keller 氏が強く勧めていますが、予算が許すのであれば、ある程度の精度を有した人体模型を入手して、実際の形状を細かく観察しながらモデリングをしていくと、より深く学習できるように思います。
私の場合は、高価で大きな人体模型の購入は難しいので、小さくて安価な立体パズルの『4D HUMAN Anatomy』シリーズをいくつか購入して、これと数冊の医学書を手元に置きながら、少しずつ本書を勉強しています。
自分のスキルが上がって、さらに詳細な構造の情報が必要だと感じたら、本格的な人体模型の購入を考えてみようと思っています。
この書籍には DVD が付属していて、書籍の中で解説しているモデルの制作手順を記録したムービーファイルや、ZTL ファイルなどが入っています。
書籍が届いてまず、7章の手のモデルデータを ZBrush にロードして、グルグルと回転させながら、制作プロセスを記録したムービーを眺めてみたのですが、本当にこの書籍を購入してよかったなぁ、と実感しました。
ZBrush はバージョンが変わるとインターフェースなどが結構変更になりますが、この書籍ではバージョン 3.1 が使われていました。
ボーンデジタル社の方に伺いましたら、10月ころに訳書の発売が予定されているそうです。非常に優れた書籍なので、訳書が出版されたら、訳書もさっそく購入したいと思っています。
【追記】
ボーンデジタルから出版された本書の翻訳書が、10月26日、ジュンク堂書店の店頭に並びました。
ジュンク堂さんに伺いましたら、各店頭に2冊〜7冊程度置いてある、とのことでした。