昭和マットの歴史書としての一冊
★★★★★
著者の本は、最新版「つくりごとの世界にいきて」を先に読んで、本書を手に取ったが、
本書の方が、「週刊ファイト節」が効いている一冊である。
最近、著者のような往年のプロレスマスコミ人が書く本は、
本人の意図よりも「イロモノ」として見られる傾向があり、それは少々どうかな、と思ったりする。
著者側の「気負い」も多少「前のめり」になっていたりするものだから、そこでより読む側との齟齬が生じるかもしれない。
あとがきを読めば、本書の立ち位置は、ミスター高橋本と同じ「問題提起」だそうだ。
問題提起というのは、過去に対して行う事も、「歴史から学ぶ」という点で意味がないとは言わない。
だが、本来、問題提起が一番効果があるのは、「現在進行形の事象」についてであろう。
「リアルタイム=過去」では、「自覚的に共犯関係」であった著者らマスコミ人が、
「現在」プロレスが衰退したから、
「過去」の問題を提起するなんて「ご都合主義」が、果たして「正当な問題提起」になるのだろうか。
しかも、著者らが「問題提起」している「現在のプロレス」は、「著者らが生きてきたプロレス」とは全く別もの、全く不連続なものでないか。
大相撲は、「連続」している。原則があるから。故に相撲界では、過去からの問題提起は有効だろう。
しかし、プロレスは、原則がないのだ。ゆえに非連続である。非連続体に有効なのは、現在の批判だけだ。
力道山も馬場も猪木も「原則」を作れずに終わってしまった。いや、作らなかったのだろう。
作らなかった故に、馬場は還暦を過ぎてもリングへ上がり、猪木は、格闘技路線を走り、薮から蛇が出て、
リアルファイトからプロレスが踏み台にされる下地を作り、
後進たちは、どんな技でも「キックアウト」できる「2.9カウントプロレス」をやり始め、
それでも人気が陰ると、全日本では、AV女優をリングに上げ、
ゴッチ、藤波のストロングスタイルの系統を継ぐ西村修は、リング上で女優の脱いだパンティを頭に被った。
こんな状態で「昭和プロレスの提言」が何の意味を持つのか。
もともと原則のないプロレスに、業界人であろうとファンであろうと「正論」を吐くのは無理である。
そのような幻に向かって吐く正論を「幻想」と言う。
「世界最高峰のNWA世界タイトル」も、「格闘技世界一のアントニオ猪木」も、もう我々の目の前にないのだ。
元業界人も我々ファンも、もう「幻想」はいいではないか。
故に、著者ら昔日のプロレスマスコミ、業界人は、「提言」とかエクスキューズすることなく、
すっぱり割り切って、「暴露意識」ではなく、「プロレス隆盛のあの時代の歴史の証人」として、「歴史書」を書くつもりで本を出して貰えればいい、なんて思ってしまうのだ。
少しガッカリ
★★★☆☆
ネタに目新しさも少なく、過去の記録に単純な事実誤認がちょくちょく見られちょっとガッカリ。次回作に期待しますか。
プロレスのことよく知りませんでしたが、、、
★★★★★
先日の三沢選手の悲報のニュースを観てから
何とはなしにプロレスのことに興味を持ち、
たまたまこの本と出会いました。
格闘技には少し興味有ったのですが、
プロレスのことはそれ程知らなかった私ですが、
この本を読んで、何となく名前だけ知っていた、
猪木選手や馬場選手の様々な興味深いエピソードを知ることができ、
もっともっとプロレスを観てみたいなあと思うようになりました。
プロレスの話しをする友達もいないので、
これからは実際に試合を観たりして、お話しできるお友達を作りたいなあと思いました。
最後の外人レスラーの話しも何だかリアリティーが有っておもしろかったです。
友達にも勧めてみようと思います。
プロレスファンだけでなく
★★★★★
昭和史というものはプロレスの歴史と言い直しても
過ぎた言葉にはならない、と筆者は思う。
週刊ファイトという一時代を築いたプロレス紙の編集長である
著者でしか知り得ない、数々のエピソードは
昭和を生きた僕達の胸にくすぶっている
熾火を刺激し、また哀愁という淡い感情を抱かせる。
女性や若者達からは敬遠されがちな昨今のプロレスではあるが、
かつて全国民が熱狂した時代があった。
老若男女がテレビにかじりつき
手に汗を握った時代があった。
プロレスには本来、誰もが楽しめる社会性があるのだ。
本書はプロレスを糸口として昭和史の有る部分を分かり易く切り取っている。
そう本書は書籍版「三丁目の夕日」とも呼べるかも知れない。
本書を通じ、多くの若者達にプロレスの"面白さ"
更には昭和という時代への哀愁に触れて欲しいと切に思う。
プロレスを知らない若者達、女性達にもぜひ読ませたい名著。
ネタ切れか?
★★☆☆☆
井上氏は、情報収集の第一人者といえるが、この本はネタがバラバラ。
ちょっと取ってつけて、無理やり書かされたような感がある。
やはり一貫性のあるテーマがないと、書籍としては辛いのではないだろうか?
むしろ、外国人レスラーとの交流録だけで一冊書いてほしいと思う。