切り口は興味ある
★★★★☆
宗教の罪という切り口は面白かったが、如何せん学術書のような書き方が残念。テーマが深いだけに、もう少し素人寄りに書いていただけるよかった
信仰のある人に読んで欲しい
★★★★★
今の世界情勢を見本に一神教への警鐘をされている。
宗教が平和を妨げているということもおっしゃっていて、
次期宗教の形は無神教が理想とおっしゃっている。
(抜粋:私がいう無神教は、神仏の姿が消えてしまって、われわれの体内に入り込んでくることである。それは神仏を礼拝したり、論じたりすることもなく、神仏ともに生きていく生き方のことである。)
私も、以前宗教を信仰していたことがあり、当時から常々矛盾に思っていたことが何度もあり、離れてしまったが、
本書を読んで、すごく当時の疑問が納得したのと、今後の生活について、筆者の唱える無神教
を実践していきたいなと思った。
今、なにか信仰している人にこそ読んで欲しい。
もちろん、宗教に興味があるが、特に信仰しているものがない人にも読んで欲しい。
蛮勇を振るう著者
★★★★★
蛮勇ということばがあるが 著者の「語り」は蛮勇に満ちている。
「21世紀は宗教の時代ではないか」という事を僕自身がいままでのレビューで幾度か言ってきただけに 本書の題名を見ただけで買ってしまった。
著者の「乱暴なくくり方」に関しては すでにほかのレビュアーの方の言われる通りである。著者の「熱い想い」という筋が一本通っているが 取り上げている素材は その「取り上げ方」において 幾分強引で乱暴だ。
但し それは作者も承知した上での「確信犯」であると僕は強く感じた。
世界にあまたある宗教を「断罪」するという趣旨を 出来るだけ多くの人に伝えたいと考えるのであるなら それなりに「ざっくりした」口調は必ず必要だ。おそらく著者は 本書をいくらでも難解かつ格調高く書くことはできたろうが それを避けて あえて「ざっくばらん」な話し方を取った。
その戦略は 本書への批判を容易にするという点では逆風なのだろうが それ以上に「読ませる」という点には成功している。そうして 本書の趣旨を考えるなら その「読ませる」点が肝要なのだろう。
著者は宗教家だ。彼が批判しているのは「宗教そのもの」ではなく「宗教に隠れた人間の愚かさ」である。
考えてみると有史以降 現在に至るまで 人間は宗教と共に歩んできた。
宗教によって救われた人もたくさんいるだろうが 宗教に滅ぼされた人も膨大な数になっているはずだ。その宗教の両義性を踏まえない限り 僕らは 依然として お釈迦様の手の平の上にいるとしか言えない。しかも そこで時に殺し合いまでやっているわけだから 本当に「救い」がないとしか言いようがない。
21世紀は宗教の時代だ。「宗教の時代」という意味は「人間が宗教をどう扱うのか」という意味である。この点で 本書は一つの答えを提出しているのだと思う。
今、必要なものは「祈り」
★★★★★
20年間仏教の修行をし、ハーバードで神学の修士号を取得した比較宗教学者による現代社会に対する警鐘。本書では、戦争、紛争、経済格差、環境破壊、科学技術の乱用などさまざまな問題を引き起こしている一神教的コスモロジーから多神教的コスモロジーへの転換、さらには、神仏を礼拝するのではなく神仏とともに生きる「無神教」を人類の課題とする。そのために「祈りの力」を信じることを唱える。一見過激にも思えるタイトルではあるが、筆者が主張するのは、我々一人ひとりが愛を持って今という時を生きることであり、それを最も妨げているのがシステムとしての宗教であるということだ。あらゆる宗教を研究した著者の論旨には説得力がある。ここで取り上げられているのは宗教だけでなく、神話や深層心理学、ジョン・レノン、水墨画、俳句と幅広い。「ヒロシマはキリストである」とする最終章は子どもたちにも是非とも伝えるべき内容である。
「無神教」の説明が曖昧で、種々の言説の「いいとこどり」に終っている。
★★★☆☆
本来、人間の救済や解放を目指していたはずの宗教(とくに一神教)が、
むしろ人間を抑圧し、世界平和を妨げる最大の要因になっていること、
また、つねに「仮想敵」を想定せざるを得ない構造を持つ一神教よりは、
多神教的なメンタリティーこそが、今後は求められるべきということについては、
すでに同様の議論がなされてもいるし、基本的に同意できる。
ただ、必ずしも多神教ばかりが良いわけではなく、
そこからさらに「無神教」に進むべき、とする理由として、
「多神教たる仏教にも、激しい宗派対立が存在する」
という事実が挙げられるのみでは、完全に説明不足だと感じた。
その直後の部分では、「無神教」のエッセンスを語る教えとして、
華厳経の「四種法界」の思想が、唐突に引用されているのだが、
多神教である仏教一般と、その教えの一つである華厳経が
具体的にどう違うのかはさっぱりわからないままだし、
全く背景の異なるアーミッシュが「事事無碍法界」を実践していた、
とするあたりにも、やや大風呂敷が過ぎるという印象を受けた。
また、ところどころ記述がひどく粗いことも、やはり気になった。
曼荼羅とインダラ網についての説明がなされたあとで、
「ところで最近、日本人技術者が超精密大気汚染測定器を開発したが、
それによれば地球の反対側で有毒ガスが発生しても、日本で感知できるそうである。
インダラ網は、古代インド人の想像の産物ではなく、現実だったのである」(p.177)
という一節が差し挟まれているが、これではほとんどトンデモ本のレベルである。
同様に、ユング心理学の基本的概念についての説明の直後に、
「本書を見つけて購入し、呼んでくださっている読者は、
個性化過程の中で、私の魂と「一なる世界」で共鳴し、
本書が目にとまって手にするという共時性があったわけである」(p.179)
という記述が続くのには、正直、なんだかなぁ、と思ってしまった。