あっという間に読んでしまった
★★★★☆
1巻を読んだらおもしろくて、2巻、3巻とすぐに読み終えてしまった。
サトル君は自分で語ってるほどイマイチではなくて、
まじめで練習熱心だと思うのですが、
音楽家特有の美学が、迷いに導いたのでしょう。
そういう青年独特のゆがんだ感情は、誰もが通り過ぎたもので、とても共感できました。
音楽を勉強する高校の雰囲気やオペラの描写、さまざまな曲の解説も
柔らかい描写で書かれていて、クラシックを知らない人が読んでも楽しめると思うし、
ぜひ、この曲聴いてみたいとCDを買いそうです。
しかし女性のキャラクターが、どれもあまりいい印象がなくて
最初から最後まで、南は好きになれなかったし、
同級生やお母さんなど、態度や台詞が極端にしらじらしく不自然で粗雑な気がしました。
これだけサトル君をはじめとする男性キャラが、どれも素敵なのに残念。
でもこんなにキャラクターに思いがあるということは
この小説に夢中になった証拠かも・・・
伊藤慧、お幸せに
★★★★☆
南の再登場にはびっくりした。金窪先生にも気持ちにけりをつけた。いろいろなごたごたを整理して、静かで納得のいく終幕だ。だが、最も印象に残ったのは伊藤慧。あんたやっぱりなあ。「パートナーに恵まれてる」ってなあ。死ぬ気で好きだったんだなあ。2巻でからかってごめん。
大人のための青春本
★★★★★
ちなにみ音楽の知識はまったく無くても完全に堪能できます。
これほど感情移入させられる小説は久しく読んでませんでした。その分いい意味で?後遺症が長く残りました。
1巻目は遠くなった自分の高校時代を思い浮かべながら、微笑ましくも羨ましいと思いつつ楽しい気分を味わってました。
高校生になった子供にも読ませたいなくらいの長閑な読後感でした。
そこで2巻目、あまり警戒もなく感情移入していただけに受けたショックは並大抵のものではなかったです。
主人公の受けたショック(あまりに理不尽に思える状況へのやり場のない怒り)がまるで自分の経験のなかで、つい最近起きたかのような
衝撃を受けました。その感情は2日たっても消えず、ある意味辛かったです。
3巻目では、そんな気持ちが解消されるのか、なんとかハッピーエンドに導いてくれるのではとすがる様な気持ちで読み始めたました。
でも3巻目も面白いし納得できる内容だったけど、ざわついた気持ちを静めてくれるものではなかったです。
それは自分の人生を振り返れば想像できるはずで、人生の航海中にハッピーエンドなんてあるはずも無いですよね。
書評の粗筋だけ読めば普通の恋愛、学園もののようなのに。読後のこの感情はどこから来るのでしょう。
最後に主人公は吹っ切れたと語るところがあるけど、3巻読み終わっても未だに気持ちのざわつきが治まらないです。
後、気になって仕方が無いところがひとつ。17歳の女の子の気持ち等わかるはずも無いけど、南は夏休みに別の彼氏と付き合った後、
何事も無かったら主人公とどう付き合うつもりだったのでしょう。だれか聞かせて下さい?
古き良き時代
★★★★☆
青春時代は輝いて見える。過去を振り返ると、そう感じる。本書も輝かしき青春時代の思い出をつづったような物語であった。
現在とのギャップがあるからこそ、小説としては光り輝くのであろうか?
青春は終わっても、人生は続く
★★★★☆
音楽高校を卒業するまでの最終学年を迎えた主人公・サトルと仲間たち。
ある人の「空白」を抱えたまま、最後の時間をそれぞれの道を模索しながら
音を作ってゆく日々。
卒業前提の話なので、感傷的に泣かせに走る手もあるし、あるいは、皆が
成功して立派な音楽家になりました、めでたしめでたし、と、きらびやかに
終わる手もある・・・が、作者は、どちらの手も使わず、淡々と、力強く
その「最後の時」を描くのだ。そして、それ以降の大人になった彼のことも。
音楽や恋に打ち込んだ日々を、ただ「せつなかった」「充実してた」と言いきれずに
これだけ長い紙数を割いて、そのもどかしさも、わけのわからなさもすべて
描き切ったからこそ、ラストの主人公の静かな姿にグッとくる。