音楽好きにはたまらない
★★★☆☆
家庭崩壊していた家族が、カルテットを通して
絆を再生していく物語。
設定は面白く音楽的要素もきちんとしており、
文体も読みやすくてあっという間に読めた。
ただ、家族が絆を再生していく過程には心温まるのだが
心情描写がやや少なく、
物語後半までずっとぎくしゃくしていたのが
一ページで急に仲直りしたりして
ちょっと振り回された。
このあっさり感を読みやすいと感じるか物足りないと感じるかは
人それぞれといったところでしょうか。
本格音楽的家族再生物語
★★★★★
現代社会の問題でもある、核家族を舞台にした物語。
天賦の才に、英才教育を受けてきたバイオリニスト開、その会を弟に持ってしまいコンプレックスに悩み、暴走気味の姉美咲、音大を出たものの会社をリストラされ求職活動中の父直樹、そして学生結婚で自身の音楽家をあきらめ、息子にすべてを託す教育ママな母ひろみ。
ひろみは開に過度の期待をかけ、開はそれに応えることで家族をひとつにつなごうとする。
しかし、ひろみが開に期待をかければかけるほど、そして開がそれに応えるほどに美咲の立場はなくなり、疎外感を色濃くさせてしまう。
直樹は休職中という身で肩身が狭く、家族をまとめる事ができない。
家族の歯車がずれ、どんどんと不協和音を奏でていってしまう。
開はなんとか音楽で家族をもう一度ひとつにしようと奔走する。
出てくる音楽がいいです。そして家族にまつわる音楽がらみのエピソードも情景豊かでとてもいいです。
中学の時に聞きまくったクラシック音楽が脳内プレーヤーで色鮮やかによみがえり、内から五感を刺激してきました。
作者の鬼塚さんの音楽への造詣の深さがそこかしこに溢れています。
開の甘酸っぱい14歳の心理もとても新鮮で最高です。高校生の美咲との微妙なギャップもきちんと描かれていて、大好きな青春もののフレーバーも楽しめました。
表紙を飾るスカイエマさんのイラストもなんとも言えず爽やかです。
とても爽やかな読後感に、しばらく浸れる余韻が心の若返りをさせてくれました。
そんな作品です。
音楽を通して蘇る家族の物語
★★★★☆
主人公は中学2年の男の子「永江開」。ヴァイオリンの個人レッスンを受けている以外は極普通の少年であるが・・・実は彼の家族は危機に瀕していた!
子 供の為に音楽を「捨てた」両親。その両親の期待を一身に背負う長男の開。才能溢れる弟のために家族の中で疎外感を抱き荒れる姉・・・。父親の失業をきっか けに次第に壊れていく家族。失業中の頼りない父親。「子供のために」と一途な母親、自分を認めてくれなかった両親 や可愛いはずの弟を疎ましく思わずにはいられない姉の姿・・・典型的な現代の家族を描いていて前半はちょっと辛い・・・。(汗)
思い出の家族写真の様に再び永江家の演奏会を開きたい!中学生の開は家族のために、そして自身の未来の ために奮闘する・・・というのが後半の展開。
父親はピアノ、母親はチェロ、姉はフルートを手にし、ポピュ ラーなライト・クラシックを演奏する場面が描かれますが、開以外はかなりお粗末なレベルからのスタートとなっています。当然数々の困難に直面しますが、結 末は・・・中々感動的なフィナーレとなっています。
演奏場面の描写は「本格的」と言うほどではありませんが、逆に誰でも楽しめると言えます。蘊蓄抜きで、家族の間の切実なやりとりや、演奏という行為を通して得られる不思議な高揚感、その結 果もたらされる家族の「再生」の顛末を味わう物語ですね。
家族も含めて楽器演奏とは縁の無い私からするとちょっと現実離れした部分もありますが、全体としては無 理のない展開で楽しめる作品です。
家族+音楽=絆
★★★★☆
ヴァイオリンの才能がある開の家族を描いた物語。
職を失った父、アルバイトをしている母、自由奔放な姉。
家族が崩壊しかけた時、それを救ったのは音楽でした。
「カルテット」という題名の通り、いくつもの曲が登場します。
しかしどの曲も知名度が高いので、すんなり受け入れられました。
ただ、もう少し登場人物たちについての記述があれば、
より濃い作品になったのではと思います。
音楽の背景や知識がもっとほしかった
★★☆☆☆
才能を有望視されている中学生のバイオリニスト・開が
バラバラになりかけている家族を「カルテット(4人構成の演奏)」で
絆を取り戻そうとする物語です。
離婚危機の両親、グレかけた姉、才能あふれる開のキャラクター設定と
展開は、いかにもありがち かつ若干現実離れしてはいますが、
ストーリー自体は読みやすく、さわやかな気分にはなれました。
どの道を志すにも、基盤となる家庭・人との絆が不可欠なんだ、と実感します。
ただもっと、それぞれの楽器や曲の背景、音楽を志す人の気持ちが
ほぼ、素人である読者が少しでも垣間見れるようなくだりがあれば
もっと良かったなぁと思います。
これが例えばカルテット(音楽)でなくバレーボールにそっくり
そのまま内容を入れ替えても今のままで話が通ってしまう、というか。
もう少し、この本から学ぶものがほしかったです。
それは、開のバイオリン講師である千尋先生いわく
「自分で考えて見つける」ものなのかもしれませんが。