どんなグルーブでもお任せのオールスターバンドを構成するのは、偉大なラッセル・マローン(ギター)、ステップス・アヘッドのクリスチャン・マクブライド(ビブラフォン)、長年のパートナーであるリッキー・ピーターソン(キーボード)といった面々。彼らをバックに往年の名曲を見事にリメイク。スティービー・ワンダーの「Isn't She Lovely」はバラードに、永遠の名曲「Harlem Nocturne」はワールド・ミュージック風に味付けされている。60年代にそれぞれハービー・マンとドナルド・バードで有名になった「Comin' Home Baby」と「Christo Redentor」は情感たっぷりに演奏され、まるでサンボーン・オリジナルのメロディーかと思うくらい。彼の優雅なアルト・サックスの音色が全編にあふれているが、「Sugar」と彼のオリジナル3曲のうちの1曲「Spider B」ではマローンのギターがフィーチャーされている。(Mark Ruffin, Amazon.com)
15年前、ロンドンの「ロニー・スコッツ」でジェームス・ムーディーのライブに行った時、舞台の袖でJ.ムーディーと立ち話をしていたら、カッコイイ男性客が近付いて来た。黒い光物のジャケットを着たその人が、なんとデビッド・サンボーン。当時の私は、「フュージョンなんかジャズじゃない!」という嫌なジャズファンで、J.ムディーがサンボーンを紹介してくれたのに大して感激もせず、儀礼的に握手しただけだった。彼はお客として、J.ムーディーを聴きに来ていたのだ。
彼は勉強熱心なのだろう。このCDでは、みんな知ってるスタンダードをサンボーン風!に調理し、素晴らしい味でサービスしてくれる。1曲目の「comin' home baby」から、もうその世界にはまり込む。「harlem nocturne」の演奏は、これがあの曲か!と思わせるほど新鮮。「tequila」のアップテンポな演奏も爽快。「isn't she lovely」「sugar」もサンボーンならでは演奏で驚かされる。
バックも一流が揃い、特にマイク・マイニエリ(vib),スティーブ・ガッド(ds)が渋い。フュージョン時代を経験したベテランジャズファンにも堪らない1枚である。