創造された神、創造した王権―アマテラス誕生に迫る意欲作☆
★★★★★
本作は古代史を専門にし、国立民族博物館教授である著者が
出雲大社と伊勢神宮の関係を論じることで
古代における天皇、祭祀などの全体像を明らかにする著作。
古事記、日本書紀といった資料の綿密な読解に加えて
考古学の最新の成果や、民俗学的な見地に基づく推論と、
そこから新たな古代像が浮かび上がる様子には
ミステリー小説を読んでいるときのような昂揚感が味わえます。
とりわけ、<外部−内部>、<祭祀王−世俗王>などのキーワードを元に
出雲大社の存在意義や王権の性格を論じる箇所や
天照大神が持統天皇をモデルに成立した―との指摘は、
とても興味深かったです。
個別の記述内容については
古事記に関する参考文献は、結構古いのが多く
近年の神野志隆光さんや水林彪さんらの議論と比較してみないと、
何とも言えないのですが
ただ、持統天皇とアマテラス、文武天皇とホノニニギが対応関係にあるならば
天武天皇とタカミムスヒも対応関係にあると考えるのが自然なように思えるのですが、
その点、著者はどのように考えておられるのか?気になりました。
古事記や日本書紀にまつわる話は
オカルトじみていたり、あまりに細かい議論になっていたりなのですが
その中において、幅広い知見を元に論理的かつ巨視的な推論を重ねる本書。
古代史に興味のある方は必見の一冊です☆