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ルー=ガルー 忌避すべき狼 (講談社ノベルス)

価格: ¥1,470
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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   国による中央集権的なデータ管理が進み、他者との接触のほとんどがモニター上で行われるなど現実と仮想の境界があいまいとなった21世半ば、14~15歳の少女のみを狙った連続殺人事件が発生した。事件の鍵を握る同級生の足取りを追う14歳の主人公・葉月、謎めいた美少女・歩未(あゆみ)、天才少女・美緒。本作は、妖怪をモチーフとした作品で人気の京極夏彦が「美少女」「バトル」「友情」といった、アニメやコミックの物語要素を盛り込んで描いた近未来ミステリーだ。

   興味深いのは、2030年から53年における「通信」「病院」「警察」などの社会設定を、アニメ雑誌やインターネットを使って一般読者から公募した点だ。作品中の「形状記憶植毛」や「伝書鳩」などは読者のアイデアが採用されたものだ。巧緻なプロットとロジックを縦横に操り、読者を魅了してきた京極は、ついに読み手をも作品世界に巻き込んで壮大な「仕掛け」を完成させた。20世紀末を生きる人々の心の内を映しだした近未来の姿は、20世紀末という時代が抱え込んだ命題をより鮮明に浮き上がらせるための「大仕掛け」だ。

   また、フランス語で「狼憑き」を意味する表題に象徴されるように、妖怪や化物との関連が見て取れる点もファンにはうれしい。フランスでは、1764年に14~15歳の少女が狼と思しきけものに惨殺されたのを機に、3年間で80人の子どもと女性が殺されるという「ジェヴォーダンのベート」という事件が伝説化している。中世ヨーロッパの狼伝説をよみがえらせ、あえて近未来へと舞台を移し変えた京極は、危険にさらされている現代の子どもたちへ警鐘を鳴らしているのかもしれない。(中島正敏)

美緒がお気に入り ★★★★★
自分がこの作品を知ったのはコミック(完全版ではナイ)が最初でした。本屋で偶然見つけ購入し、そして読んでいくうちに、ドップリとルー=ガルーにはまりました。 そして今回、小説版を購入しました。 コミックでは簡略化されていた精神描写の部分を「あ、こういう事か〜」と思う所が多々あったり、作品の深さにまた魅入ったりと楽しく読めています。 まぁ、自分がこういう作品とか好きって事もありますが みなさんも是非、読んでみて読んでみて下さい
星三つの良作 ★★★☆☆
作品そのものの完成度については、他の京極作品と同様に十分満足度の得られる物。
京極好きならば、読んで色々と考える所はあっても、楽しめると思う。
しかし、完成度の高さが面白さには直結しない事もある。
無機質な社会、無機質な思考の人間、そこに生きる有機質な人間と有機質な思考の
対峙が各所にある為、社会を徹底的に無機質にしつつも、その本質が有機質である事を
語らねばならず、この部分の完成度が全編に跳ね返って読む側を撥ねつけている様に思えた。

その偽善的な世界を突き崩していく面白さが十分にあるのだが、作品の8割を世界の
構築の為に費やさねばならず、読み手が愉しむ事が出来ない(その様な世界観なのだから
それであっているのだが)
人間には情念があり、それは計算出来る物ではないのだが、それを故意に封じ込める事も
出来るという書き手の危機感と警句が作中にちりばめられており、読者としてもそれを
共感出来るので、後半は面白いのだが、そこに至るまでのストレスが半端ではない。

しかしその通り、この物語の内包する問題は現実に実在している問題で、この物語に
内包されるストレス自体は、現実に今の私達が悩まされている問題そのものでもあると思う。

人はいつから、自分の頭で考える事をやめてしまったのだろうか。
この作品での京極は、己の世界観を読者に提示しながらも、それを文字の羅列という
データとしては鵜呑みにせずに、読者自身の頭でよく考えろと言っている様にも思える。

おそらく、これはとても面白い作品だ、と評されるのも望んではなく、本当にあなたは
自分の頭でこの作品を面白いと感じているのですか? と問い続けている様にも感じた。

故にこの作品を評するにあたって、星4つ以上をつけるのは作者の本意でも無いように
思えた。まぁ星という数値データでの判断こそが忌むべきシステムなのだと思ってしまう
時点で、自分はこの作品に影響されてしまっている。

良くもない悪くもない。あなたという有機質の脳味噌と感情を持った読者自身が
この作品を良いと思うのならそれは良いし、悪いと思うならそれも正しい。
管理された数値データなど、指標にはしない事が望ましい。
傑作とは言えないが… ★★★★☆
京極堂こと中禅寺秋彦が主人公の百鬼夜行シリーズが好きなので、京極夏彦氏がどんな近未来作品を書いたのかと興味を持ち、購入してみた。

途中までは、メインである少女4人(葉月・歩未・美緒・麗猫)が少女達を襲う連続殺人犯をつきとめるべく謎を解明していく作品なのかな?と思っていたのだが、結局全て読み終えてみると謎自体はシンプルなもので、むしろ作品の世界観やテーマ、そして終盤のアクションシーンこそがこの作品の売りではないかと思った。
こう書くと、「じゃあ、殺人犯探しは簡単でつまらないのか」と思われるかもしれないが、そんな事はなく、予想外の事実にかなりの衝撃を受け、引き込まれた。
人が人を殺す動機とはどういうものかという点をいろんなキャラの視点から多面的に描いているところが面白い。

ただ、一つ一つの章が短い割には、章が切り替わる度に葉月ら少女達とカウンセラーである静枝達の視点が切り替わるのが少し読みづらかった。
それに、少女達がさらわれて殺された理由に関しては、ちょっとこの作品の世界観に合ってない感じがするし、人によってはかなりの不快感を持つかもしれない。

それでも、個人的には葉月ら4人の少女達のキャラクター性が好きなので、物語の中盤から終盤にかけてはかなり楽しめる作品だった。
京極堂でなくても・・・ ★★★☆☆
なんでしょう。
悪くは無いんです。お話としては、面白くないわけじゃない。文章力のある作家さんだなあ、とも思います。

でも、なぜか、京極夏彦の本じゃない気がします。

公募で設定やらキャラクターやら募集したせいでしょうか。なんとなく全体の世界観が散漫で、入り込めないのです。
京極堂の世界観を期待していると、肩透かしを食らわされるような。
読者層を想定してのことなのでしょうか。文体もライトノベル的になっていて、わかりやすいのですが、いつもの京極堂の「味」が薄い。
せっかく京極夏彦の書くSFなのですから、あの、こちらを圧倒するかのような語り口で独自の世界観を作って欲しかった。
今後に期待をこめて、辛口の評価にさせてもらいます。
妖怪とは無縁な近未来SF小説の傑作 ★★★★★
2030年頃の日本を舞台にした、あの「妖怪小説家」京極夏彦の近未来SF小説。連続殺人事件に巻き込まれる少女たちを主人公とした物語。

相変わらずの弁当箱本である。筋は比較的単純で、ちょっと読書に慣れた人なら、半分も読めば「カラクリ」は見えてしまうし、動機に至っては、いくつか想定した中でもっとも単純な理由であった。だから犯人探しのミステリーとしては平易な部類に入り、読書の楽しみは専ら、如何に展開するかということに尽きた。そして、それは文句なく素晴らしい。

とても勝ち目のない難敵を相手に少女が絶望的な戦いを挑む、という設定は、標準的なオタクの標準的な好みであると思う。細かい点も含めてどうもこの作品にはその臭いがすると思っていたら、これは雑誌「アニメージュ」などから読者のアイディアを募集し、さまざまに反映させた双方向小説なのだそうだ。もちろんそれは悪いことなどでなく、数多の意見を取り入れてこれだけの作品を物した作者の力量には脱帽するしかない。前半、なかなか物語が動き出さないけれど、これを我慢して読むのも読書の楽しみだろう。

唯一私が不審に思ったのは、「前巷説百物語」でも感じた偽善臭である。本書を含めて多数の残虐行為を描いていながら、一切の殺人は悪などと繰り返し作中人物に言わせている作者は、これを一種の免罪符にしているつもりだろうか。他人の人生を身勝手に・不条理に・残酷に奪った人の、その人生を守る必要を私は感じない。人を殺めることを楽しいと感じる人がいるのも医学的に事実だ。ヒューマニズムは相対的な原則に過ぎない。この作者はさまざまに理屈をこねるが、ごく平均的な感性を持つ人が生理的におかしいと感じることは、やはり大抵の場合おかしいのではないか(「ごく平均的」とは何を指すのか、などという議論は無意味である)。