NODAMAPや野田演出作品が劇場にかけられたときに、個々の作品において単発的に新聞・雑誌に発表される「劇評」というものがある。
私も自分が観た芝居の劇評が載っていたりすると、目を通す。そういった劇評の中には、学生の感想文程度のつまらない劇評もあれば、その芝居を観て自分のなかでもやもやと感じていたけれど、自分自身で説明できなかった気持ちをスパッと説明してくれているものもある。
つまらない劇評は、古新聞・古雑誌として消えていくのが相応しいが、ちゃんとした劇評は、今後のためにも残しておいて欲しい。
長谷部さんの劇評は、残しておいて欲しい劇評だ。
この本に納められている芝居は私も全て観ているが、劇評を読みながら、そのときの芝居のシーンが蘇ってくる。
そして、その芝居の時々で発表される単発の劇評の拾い読みでは分からなかったが、この本で10年ものスパンで積み重ねられた劇評を読んでみると、野田作品(=野田さんの思いの表出)がどのように変化してきたのかがよく分かる。
野田作品を観て感動したんだけれど、その感動を言葉にして説明できないもどかしさを感じている方には、お勧めできる本だと思います。