がつん、と、重たい一冊。
★★★★★
す、すげー。
タイトルを考えずに読んで正解。
一作目の重たさにちょっと沈み、二作目でめまい。
三作目はなんどもなんども読み直し、ため息。
四作目は幻想的なエンディングにしばし瞑想。
そうして、最後で息が苦しくなった。
短い中にスリラー、恐怖、幻想、狂気、苦しいまでの重たさ。
ちらほらとのぞく日常がよけい、すぐそこにあるかもしれない隣人の陥穽を思わせる。
お腹に力を入れて息を詰めて読む、がつんの一冊。あちら側に、落ちないように。
この作家は、なんだ?
完成度の高い異色の警察短編小説。
★★★★★
初めて読んだ作家でしたが、なかなか読ませました!
短編が5編ですが、主人公はいずれも退職した警察官、それも訳ありの退職、暗い過去を持った刑事ばかりという、異色の警察小説。
これでもか、という過剰な心象風景描写がやや窮屈ですが、バラエティに富んだ短編に唸りました。
秀作は冒頭の『退職刑事』。今は退職し、大邸宅にひとり隠居の元警察官の主人公。息子の不祥事を知らされ、腰を上げるが…。
重厚な情景描写、起承転結のメリハリ、ラストの落とし方、完璧です。かなり完成度の高い短編に目からウロコでした。
背筋も凍る恐怖感をお望みならラスト『父子鷹』がお薦め。
なかなか面白かった
★★★★☆
リタイアした警察が主人公の短編集(5作品を収録)。
各ストーリー毎に元悪徳警察であったり、退職後も事件解決に執念を燃やす警察であったりと、その主人公の人物像が変わる。
作品は細かい描写が必要な部分がやや荒削りである印象はあったものの、どの作品も概ね面白かった。
特に「神隠しの夜に」は良かった。
寂れた山村で起きた幼児の行方不明事件を追ってリタイアした警察が事件の真相に迫る。
舞台が寂れた地域での村ぐるみの犯罪だけあって「横溝正史」作品を彷彿とさせる作品であった。
警察小説ファンにはお薦めしたい。
刑事という職業に人生を翻弄された男達...
★★★★☆
タイトルの通り、退職した刑事達のそれぞれの人生を描いた短編集。
定年退職した刑事が息子の窮地を救うために奔走した先に知った現実、
ドロップアウトした元マル暴担当刑事が元恋人のためにした壮絶な決
意、病のために死期を前にした元刑事が人生を暗転させた未解決事件
の現場へ再度訪れたときに知った恐ろしくも悲しい真相など...刑
事という職業故に人生を翻弄された男達の悲哀や切なさや空しさや時
には狂気などが描かれています。
みな警察官になった当初はそれぞれの正義感だったり功名心だったり
の夢があっただろうに、いつの間に彼らはこのような運命に捕らわれ
ることになってしまったのか...。
刑事という職業はやはりディープなもののようです。