選挙権の有無に係らず読んでほしい
★★★★★
現代日本の女子高生が、異世界で王様をやる事になってしまいました。しかも命掛けで。
身も蓋もない言い方をするとそういうお話が本編です。これはサイドストーリー集。しかも傑作揃いの。
このシリーズを読んで「明日総理大臣にされちゃったら私どうするだろう」と考えちゃいました。
ネットやTVニュースを見ると、政治に対する不満が一杯。でも現実はとても低い投票率。何で?
現代ほど投票の自由が認められた時代はないのに。百年も経たないうちに、参政権の有難さを忘れちゃった?
投票したい政治家がいない?立候補者全員のマニフェスト比較しましたか?
その上で自分に近い考えの人がいないなら、自分で立候補するしかないですよ。
…って言いたい!選挙に行かない人に!せめて白紙投票して!過半数が白紙なら問題になるから!
政治家とか芸能人とか、身元を晒している人を匿名で攻撃するのは簡単。
官僚とか警察官とか教師とか子育て中の親とかに、高い理想を課して非難するのも簡単。
でもその資格が自分にあるのか、その人以上のプランが示せたり活動ができたりするのか、
またできるのであれば、プライベートを投げ打って他人に尽くせるのか、ちょっと考えてみる。
これだけでネットがかなり平和な世界になると思うんだけどなぁ。
作品の中で差別されてる「半獣」を、現代日本においてだったら外国人とか、ハンディキャップのある人に置き換えてみるのもいい。
村上龍氏の「半島を出よ」に、「どんな悪徳政治家でも根本には『この国を良くしよう』という思いがある」みたいな記述があって、
少し気が楽になりました。当たり前の事なんだけど。投票が募金なら、立候補は全財産投げ打つ位の覚悟がいると思う。
「責難は成事に非ず」は、私の座右の銘になりました。
現実の政治のむつかしさ
★★☆☆☆
簡単にいうと、現実の政治のむつかしさを描いた短編集です。
ここまで、十二国記をいっきに読んできて、最後にがっかりしました。
陽子の冒険の時代は終わってしまい、もはや、あるのは地味でつらい政治ばかり。
もはやこれはファンタジーではありません。
作者がなぜ、ここでシリーズを切ったか、わかるような気がします。
冒険ファンタジーはあっても、政治ファンタジーはないのです。
すでにロングセラーとなっている本シリーズですが、これから読む人は、この巻は読まないほうがいいでしょう。
厳しさをあわせ持つ理想的な世界
★★★★★
蔵書の整理を余儀なくされ、迷った挙句、本書と「図南の翼」だけを残した。
十二国記の世界は、一種の理想郷だ。まず他国に攻め込むと、理由がいかに正しかろうと、王とその補佐たる麒麟は命を落とす。これなら対外戦争は起こらない。王は世襲ではなく、麒麟に「王たる適性がある」と選ばれた者が王座につくが、王としての道を誤る傾向を見せると、麒麟みずからが病んで警告を発する。まさに理想の世界だ。
子どもは、天に持つ資格があると認められた夫婦にだけ授かり、それも木に実る。だから親に「うんでもらった」ではなく「もいでもらった」なのだ。当然、虐待はない。ただ、王が道を誤って不在となると国じゅうに妖魔がはびこり、親を亡くす子どもは出てくるので、決して生きていくのに楽な世界ではない。このあたりの容赦のなさが大好きだ。
シリーズ唯一の短編集である本書は、そんな世界観を余すところなく描き出した傑作選。どの話も面白くて、どこか哀しい。
泰麒の悩み
★★★★★
十二国記の番外編・・・といったところでしょうか?
その中にある泰麒が初めてひとりでお出かけ(笑)をするお話に、泰麒はずっと抱えていた悩みにひとつの答えを見つけます。その泰麒の悩みは今自分が抱えている悩みにも似ていました。
自分は今ここにいる場所で役に立っているのだろうか?自分は非力で考えも及ばず皆に迷惑をかけていないか・・。立場は月とすっぽんのごとく違いますが、想像するだけで泰麒の悩みに胸がちくちくします。
「批判するだけなら簡単だ。大事なのはその先、批判したあとどうあるべきかを示さねば意味がない。」私の解釈ではこれが精一杯なのですが、これは響きました。
文句ばかり、批判ばかりするのは、本当に簡単だし、言っていて気持ちよくなったりします。
人はうつろっていく生き物で時には自信過剰になるし時に不安で居た堪れなくなる。人の傲慢さ、謙虚さ、大胆さ、儚さ、国というものとは・・・・など深く考えさせられる作品です。
ですが、本当に新刊がいつ出るのか待ちどうしい・・・。ある意味その気持ちを通り越して遠い目で待っている・・・・という感じでしょうかね・・・。でもあと4,5年とかだったら待ち死にしちゃいますYO!!!
十二国記シリーズの短編集
★★★☆☆
十二国記シリーズの短編集。戴麒は、泰王驍宗の命で漣国を訪れたが...「冬栄」、圧政を強いた峯王仲韃(ほうおうちゅうたつ)を討った月渓は、当然、芳国を率いると思われたのだが...「乗月」、景王陽子と楽俊が便りを通してお互いの近況を語る「書簡」、宝物『華胥華朶(かしょかだ)』が絡む才国の一王朝の衰退を描いた「華胥」、各国を訪れ、何やら調べている様子の男の正体は...「帰山」の五話。
十二国記シリーズファンはもちろん、これだけを読んでも楽しめる1冊。でも、全部読んでるほうが面白いですが...今までほとんど出てこなかった国や人々が登場し、十二国のほとんどが(全部じゃないですが)出てきます。お話が膨らんで行くのはよいことですが、先に進んで欲しいなぁ。