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イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫)

価格: ¥660
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光文社
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どのように死を迎えたいか? ★★★★★
死について,生について深く考えさせられる。
黒澤明監督「生きる」のヒントとなったと知って,
なるほどと思った。
卓越な葛藤と苦悶の描写 ★★★★★
この作品を手にした人なら誰もが卓越した描写に
ページを繰る手を止めることをためらうでしょう。

『イワン・イリイチの死』
葬儀の場面から、時系列を遡り、
イワン・イリイチが病で苦悶する姿の、
その表現力に心を奪われました。

イワン・イリイチの死後、プラスコーヴィア夫人は
ピョートル・イワーノヴィチにカネの相談を持ちかけ、
その後のピョートル・イワーノヴィチはホイストへ加わります。
近しい人の死後といえども、所詮他人事で済むという
人の感覚をあっさり描いていて潔い。

イワン・イリイチの今際の際の精神状態が乱れいく姿は
確かに精緻を極め、情景描写には一目置くことでしょう。
ただ、一読者とすると終わり方があまりに呆気ない。
それまでの精神描写で夢中で読んでいたのに余韻がない。
イワン・イリイチの置かれた状況は理解できても、
「小説を読む」という行為に対しカタルシスがない。


『クロイツェル・ソナタ』
この作品もまた精神の苦悶を描写した秀逸なもの。
列車に乗り合わせた客とのやり取りから始まり、
「私」にポズヌィシェがひたすら語るモノローグに、
惹きつけられます。

偶然居合わせた「私」に語りつくす描写は、
ポズヌィシェが生涯背負う妻殺しの罰を物語る。

始まりは単なる独白でした。
ポズヌィシェの発する風変わりな音で刺激を与え、
精神状態の変遷と苦悶を見事な語りとし、
においの描写によって、より鮮明に情景を
映し出す仕掛けが実に巧みです。

「私」は聞き続けた後、目的の駅に着いたら
軽く挨拶をして、列車を降りどこかへ向かう。
話は聞いたけど背負わず、自分の道を歩む。
この本の価値 ★★★★★
悟りとは無関係な普通の生活を送っている人が、自分の本質に気づきえるだろうか、という可能性を探った本だと、どこかで解説されてあったと思いますが、
単に気づきを探っていただけでなく、そこからもう一歩、肯定的に踏み込んでいこうとしています。
その踏み込みが、どれだけ深さを持っているのか僕にはまだわかりません。
しかし、その可能性を示唆したことにこそ、この本の最大の価値があると思っています。
その意味では読んで、気持ちを揺さぶられたいというようなことに、とどまるような本ではありません。
しかし、他の方のどのレビューを読んでも、気づきどころか単なる驚きにとどまっているようにしか感じられない。
まさしくそのことが、、死なないつもりでいる人間には、どうやってもわからないのだろうかと、、少しショックでした。
この本を読むことは恐怖でもなんでもありません。
気づきと救いの可能性を提示する本であって、その中にいないと信じている人が読むから、恐怖の本になってしまうのです。
死の淵にあって、神も信じれず絶望に瀕している、そんな人にこそ読んで欲しい本です。 

短編小説家としてのトルストイ ★★★★★
 長編小説で有名だが実はトルストイの本当の文章スタイルは短編小説(人類の教師と言われたトルストイはその弟子たる人類が途中で投げ出さないような短い話ばかりを実は書いており、長編は全体の数%にすぎない)であり、「神父セルゲイ」など傑作も多い。本作はその中でも最も有名な2作が収録されている。
 「イワン」はいわゆる「「アンナ.カレーニナ」以後」の作品で、この作品以来説教調になった転機の小説としてトルストイ研究では重要な作品。人類史上最も「死」を描いたと言われる臨終のスペシャリストのトルストイらしく、非常にリアル。全体的に人類愛に満ちた切ない内容で、涙なくして読めないが、主人公の友人が主人公の遺体を見て自分が生きているという幸福感を感じた、等人間の本質をえぐる冷徹さが随所にあり、単に泣きの作品になっていないのはさすが。ホスピスの先駆けともなっており、医療関係者にはぜひ読んでもらいたい。
 「クロイツエル」は人類史上最も性欲を糾弾した文学作品と言われ説教師としてのトルストイの真骨頂となっておりトルストイ愛読者でも苦手な人の多い作品。しかし、随所に格調高い文章と鋭い人間観察が見られ、文学作品としての輝きを放っているので、まああまり嫌わずに読んでほしい。
心の中に吹き荒れる嵐 ★★★★★
「内密の用事を先送りしていて、最後にはその用事にとりかかるのだという疑念が頭を離れなかった」(『イワン・イリイチの死』)

この物語は、とあるおじさんが死ぬまでの心の葛藤の話である。
そう書くと、ずいぶんとつまらない話のように思える。
実際、何か起きることといえば、人が一人死ぬだけと言ってもいい。

だが、死ぬ当人にとっては、まさに一大事なわけで。
現実世界には取り立てて変化がなくても、心象世界はまるで嵐の真っ只中のように、目まぐるしく吹き荒れる。

家族や隣人との温度差が、またなんともリアルである。
冒頭はイワンが死んだ後の描写から入るが、読み終わった後にもう一度最初の部分を読むと、「ああ・・・」と思わずうなってしまう。
結局、死ぬ本人にしか、死ぬ気持ちは分からないということだろうか。

息もつけない激しさには、ただ圧倒されるばかりである。
「読みながら、『そのとおり』とか『ばかな』と叫ぶのを、やっとの思いでこらえていた」というチェーホフの評は、なんとも的を射ているように思える。