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其の一日 (講談社文庫)

価格: ¥540
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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緊迫感のある短編集です ★★★★★
タイトル通り、4つの小品のどれもが運命が変わる凝縮された1日を書いており緊迫感があります。諸田さんは「狸穴あいあい坂」のようなちょっとほのぼのする小説も書きますが、「其の一日」は刃物の如く鋭さがあり男性が書いたような作品です。4つのうち「小の虫」という話が気に入りました。これは15歳の少年武士が、一日で父と祖父の死の真相を知り、死んだと聞かされていた実母と対面し、酒の味を覚え、人の裏切りを味わい、初めて女を知り、これからの長い一生を思うというお話です。お勧めの一冊です。


いろいろな思いが交錯しました ★★★★☆
歴史小説は背景が難しかったり、どうもおじ様的なイメージがあり敬遠していましたが、時折日経連載中の小説を眺めるにつれ、作者の著書に興味を持ちました。歴史物ビギナーなので短編は有難い!!短編ですがすごく内容が濃く重く、かといってどんよりするでなく、まとまった感のある作品集でした。多分、読まれる方によって感じ方がいろいろだと思います。いろいろな風に感じられるというのは大切なことではないでしょうか。今、日本史を学習中ですが、江戸時代というのは日本の歴史、文化、日本人にとって大変重要なポイントをしめる時代です(いままでは漠然と時代劇のイメージしかなかったのですが)。長期封建制の中での人々の感情に触れることができ、理解も深まりました。
吉川英治新人文学賞受賞作品です。 ★★★★☆
運命に翻弄されながらも一生懸命に生きる主人公たちを活写している。
どの話も緊迫感があって読ませてくれる。難を言えばちょっと地味すぎるかなと言う点か・・・

全体として、他の諸田さんの作品よりも心理描写が凄いなあと思いました。
そのへんは短篇集であるがゆえにより研ぎ澄まされた文章となってるような気がする。

桜田門外の変、箕輪心中など史実に基づいた篇もある(全部かもしれませんが?)ので興味深く読める。
特に、女性主人公の2篇がとってもとが印象的。

夫の自害の原因を調べて行く内に凄い事実に辿り着く家庭を見事に描いた「蛙」
20年以上思い続けてきた男(井伊直弼)の安否を気遣う女の心情が滲み出た「釜中の魚」。

やはり女性の情感を描写するのは際立っている。

!他の2篇も葛藤しながらもそれぞれの主人公の気持ちを深く入り込んで描写してる。
まるで読者に他人に対する思い入れというものを考え直しなさいと教えてくれているような気分にさせられる。

地味だけど安心して読める1冊だといえそうです。

読んだ次の日から少しは懸命に生きようと努力してるような気がしますが・・・(笑)

人生の哀歓 ★★★★☆
 歓、というより哀の要素の方が強い短編集。井伊直弼暗殺という歴史的其の日から、武士の妻が夫の秘密を知ることになる夫の死んだ其の日、などその人の人生を変えるような日に遭遇して動揺しつつも、精一杯生きようとする人の姿が描かれている。ミステリー仕立てで、徐々に真相が明らかになるおもしろさがある一方、人物の心の動きを丹念に書き出しており、質の高い作品になっている。私は蛙、小の虫が特におもしろかった。それにしても、時代小説は昔の人の凛とした生き方を垣間見ることが出来るのがいい。