全体として、他の諸田さんの作品よりも心理描写が凄いなあと思いました。
そのへんは短篇集であるがゆえにより研ぎ澄まされた文章となってるような気がする。
桜田門外の変、箕輪心中など史実に基づいた篇もある(全部かもしれませんが?)ので興味深く読める。
特に、女性主人公の2篇がとってもとが印象的。
夫の自害の原因を調べて行く内に凄い事実に辿り着く家庭を見事に描いた「蛙」
20年以上思い続けてきた男(井伊直弼)の安否を気遣う女の心情が滲み出た「釜中の魚」。
やはり女性の情感を描写するのは際立っている。
!他の2篇も葛藤しながらもそれぞれの主人公の気持ちを深く入り込んで描写してる。
まるで読者に他人に対する思い入れというものを考え直しなさいと教えてくれているような気分にさせられる。
地味だけど安心して読める1冊だといえそうです。
読んだ次の日から少しは懸命に生きようと努力してるような気がしますが・・・(笑)