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あるクリスマス

価格: ¥1,550
カテゴリ: 単行本
ブランド: 文藝春秋
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辛口の“クリスマスの思い出” ★★★★★
ラストの数行で涙した。こうくるか。
最後まで父に愛情を示す気配のなかった少年が
後日、父宛に葉書を書く。なかば神から命を受けて。
少年の心の声ではあるのだろう。
父と別れた後の列車で初めて感じた心の痛み。
葉書の中の少年の言葉と父の行動が
この作品を高みにあげて見事。

カポーティの作品は切なくからい。
乾ききった物語は味わい尽くしたあとからも
スパイスがボディブローのように効いてくる。
この渇き具合に山本の銅版画が美しく寄り添う。
ラストの少年の葉書を模したページの余韻が深い。
葉書のつたない文字をながめていると、
カポーティの少年時代を追体験した錯覚に陥る。
父の満たされない日々 ★★★☆☆
前の方のレビューを見て、言われてみれば確かに陳腐なストーリーかな、と気づきました。感謝祭から続く三部作を続けて読んだせいか気になりませんでしたが、単独で読むと物足りないだろうと思います。主人公の少年バディーの父に対する複雑な思いよりも、息子から届いた短い手紙を死ぬまで貸金庫にしまいこんでいたという父親の、派手に暮らしながら満たされない渇きのようなものが哀しげで、むしろ印象に残りました。
山本容子の銅版画ノート ★★☆☆☆
きわめつけに陳腐なストーリー(サンタクロースなんていないのさ、本当はパパのしわざなのさ)を、村上春樹が、やっつけ仕事のぎこちない翻訳で片付けた、どちらかと言えば、あまり面白くない童話であるが、ロートレック風でもありシャガール風でもある山本容子の版画を鑑賞するためならば(ただし好きな人に限る)、なんとか代金に見合っただけの満足は得られる、かもしれない、そんな一冊。

父はジゴロで、母は自殺――あまりにも陳腐!なんという紋切り型!
それだけではない。
父なんて嫌いさ、でも父は僕にご執心の様子、だから立場は逆転さ――唖然とさせるほどのエディプス・コンプレックス・ファンタジーである。

救いはあるのか?さあ、どうだろう。

離れて暮らしている父親に対する複雑な思いが印象的 ★★★★☆
トルーマン・カポーティの短編を村上春樹が訳し、山本容子の版画による挿絵で飾った。
著者の「クリスマスの思い出」の1年前のクリスマスを舞台にした、姉妹編的作品(実際は両作の発表年には20年以上のブランクがある)。

「クリスマスの思い出」は、おばあちゃん従姉弟とその飼い犬とのつつましいクリスマスをピュアな視点で描いていたが、本作のクリスマスは両親が離婚して母方の実家に預けられている6歳の「僕」が、長いこと離れて住んでいた父親とすごした豪奢なクリスマスが舞台になる。

だがそのクリスマスには、おばあちゃん従姉弟や飼い犬との思い出のような暖かいものではなく、いっしょに住むことがなかった父親に対する冷たい視線、父親に打ち解けない頑なな「僕」の姿しかない。
短いながらもたくさんの印象的なエピソードが重ねられる。

屋敷で開かれるパーティ、ツリーの元に積み重ねられたプレゼントの箱・・・。ジゴロめいた身分で豪奢な生活を送る父親への批判的な視線、プレゼントで「僕」の気を引こうと躍起になる父、「僕」がいたずら心にツリーの下に飾った母親の写真にショックを受ける父・・・。

ホワイトクリスマスを夢に見(物語の舞台はアメリカ南部州なので雪が降ることはない)、サンタクロースの存在さえも疑わない無邪気な「僕」の一方で、父親に対する複雑な思いが印象に残る。

『クリスマスの思い出』の前編です ★★★★☆
『クリスマスの思い出』で登場したバディー、その1年前のクリスマスのお話です。スックとクイーニーは名前が出てくる程度で、今回はバディーと父の哀しい触れ合いが描かれています。『クリスマスの思い出』を読んだ方には分かるでしょうが、共通項のない父と息子は当然のようにすれ違いを演じ続けます。その帰結点として、クリスマスがクローズアップされるわけです。

村上春樹さんは『クリスマスの思い出』の裏側だと喩えておられますが、そうとも取れると思います。最後の父の心情を思い浮かべると心が痛みます。今作も、イノセント・ストーリーの系譜は受け継がれていると言えるのでは。