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海軍主計大尉小泉信吉 (文春文庫)

価格: ¥500
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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感動の1冊 ★★★★★
なんと純粋な本なのであろうか。最近では真剣に物事に取り組んだり、人を愛することが馬鹿らしく思われる風潮があるが、昔はそうではなかったということが読み取れる一冊である。是非一読をみなさんに勧めたい。
こんなにやさしい気持ちになって流した、静かな涙は初めて! ★★★★★
 ハイブロー武蔵氏のHP、2004.10.27の日記に、この本が、100万部を越えるベストセラーであったこと、涙無くして読めない等紹介があった。
 さっそく読んでみた。
 小泉信三氏のたった1人の男子のご子息、、。信吉氏。大正7年生まれ、昭和17 年南太平洋にて戦死。享年25歳。私の父が大正8年生まれであったので、時代背景を実感的にとらえながら読むことができた。
 信吉は、家族を愛した。家族愛を素直に表現した。よく笑った。海軍に子供の頃からあこがれ、そのあこがれが現実になり、軍艦勤務となり海戦も経験し、そして海の上で死に場所を得た。
 父である信三氏の文章が、抑制されている分、わが子への愛が行間から滲み出ており、しばしば静かな涙が幾重にも流れた。
 わが子の25年の短い生涯を、慈しむ心、愛おしむ心。そして、またまったく同じ環境で、同じ長さの人生を再び送れと言われたら、信吉は、必ず「イエス」と答えるだろうと言う、、唯一無二なる確かな生涯への手応え。そうだ、人は、皆、これ以上ない組み合わせで、かけがえのない唯一無二なる人生を、家族を中心に生きているんだな。
 それにしても、信吉はやさしい、素直な人柄、良い性格のひと。そんな愛すべき青年が、数十年前の茶色い戦争の中で、死んでいったんだな、、。本当に、そんな時代を通り越して、今があるんだな、、と静かな確かな感慨を抱くわたしです。
 信吉さんのやさしさ、人柄のよさが、先の戦争を体感させてくれた。
「幾時代かがありまして 茶色い戦争ありました」中也の詩が、心の中で響きます。
 
この本とは30年のつきあい・・ ★★★★★
最初に本書を読んだのは、30年前、中学生だった。そのとき、信吉氏は兄のような存在だった。一生軍艦好きで、慶応を卒業し、一旦銀行に就職してから短期現役士官の道を選んで、海軍経理学校に学び、カッターを漕いだ。鉄アレーを捧げながら立ち泳ぎをしては、頭まで沈みながらも最後までがんばって負けなかった・・。しかも茶目である。どうかすると、甘えん坊にもなる。「こんなオフィサーになりたい」という人物だった。「理想」などというには、あまりに身近な存在だった。
私自身、慶応を受験し、銀行に就職し・・いま気付いたが、相当この信吉氏の影響を受けたのかもしれない。

いま二人の息子をもち、父になりようやく信三先生の気持ちを実感できるようになってきた。戦地に赴く子に、「私達夫婦は、きみに完全に満足している。もし子を選べといわれたら、何度でも君を選ぶ」との書簡を渡す気持ちも、いまはわかる。そんなキザな、と30年前思ったけれど、いまは、これ以上の表現ができるかな?と考えてしまう。

今を生きられて本当に良かったと心から思います。 ★★★★★
慶應義塾塾長でもあった小泉信三が、戦死した息子信吉を懐古して出版した。息子を想う父の気持ちが痛いほど感じられるとともに、何故小泉が学徒出陣に傾いていったかが理解できます。 戦争の愚かさを知ると共に、今という平和な時代に生きることが出来ている自分を幸せに思い、元気が出てくる本です。

昭和初期の慶應義塾の様子も所々に描写されており、時代の息吹も感じ取ることが出来ます。