そして浅生は街に詩を刻みつづける
★★★☆☆
探偵浅生を主人公にしたシリーズ第2作目で、7つの短編が収められている。ブラディドールシリーズの川中や約束の街シリーズの若月のように金銭面で不自由しない事が多い北方作品の主人公の中ではやや異色の存在で、依頼人と報酬をめぐって駆け引きしたりと人間臭さが強い。しかし、誇り高くそのためならいつでも自分を投げ出す、金の事を口にはしても最後は金などどうでも良いといった生き方は、他の北方作品の主人公と共通で、北方フアンは安心して読める。
ただ、この作品は、主人公のそうした格好良さだけではなく、男と女の哀しみ、関係の奥深さなどが主人公の行動を通じて浮き彫りにされていくところに特徴があり、他とは違った味わいもある。筆者の年輪を感じさせる。