著者は軍事に詳しい、安保反対派の報道カメラマン。これは彼が日本の米軍基地等を取材しながら、こっそりと進行している米軍と自衛隊の軍拡の状況、軍事産業が現在の日米の経済にいかに癒着しているのかを暴いていくという一冊です。
著者は安保反対派といっても、単なる反戦平和主義者ではなく、報道カメラマンとしての豊富な経験から真摯に戦争が起こりうる脅威を訴えています。冷徹な観察眼と徹底した分析力は確かなものだと思いますが、私には、「だからどうなの?」と思ってしまう箇所が多く見られました。
著者は、とある在日米軍の施設でいかに厳重な情報管理がなされているのかを示し、そして謎に包まれた軍事基地が市街地の中にあるということから、まるで「戦争が刻一刻と近づいている」ように描写しています。しかし、軍事基地を情報公開したがらないなんて、古今東西当たり前のこと。核兵器やBC兵器が日本に保管されている可能性についても、今まで何度も言われていたことで、著者は推測以上の新たな証拠を何一つ提示してくれません。
著者はマーシャル諸島で核実験を行ったアメリカを激しく非難します。その非難は正当なものですが、ではなぜマーシャル諸島より遥かに凄惨な核実験をウイグルで行っている中国共産党を非難しないのでしょうか。少なくとも著者は中立の立場ではなく、反米反日(親・共産主義)に偏っていると思える箇所が多々ありました。
ただし、著者のアメリカ批判は的を得ていると思います。日本は本当にこのまま、アメリカ(安保)についていって良いのでしょうか? 安保賛成派の方にも反対派の方にも、一読をオススメします。