現実と架空のはざま
★★★★☆
カリフォルニアにはこんな私立探偵が実在するような気がするが、ほんとうは一切が架空であり小説の設定に過ぎない、という当たり前の現実をしばし忘れてしまうような心地よい描写にいわば「だまされる」。事件といってもほとんどが人探しであり、その背景となるエピソードや気候、風土、街並みなどが実に巧く表現されるので、上質な「騙し絵」を見せてもらった気になる。これらの作品はほぼ30年前に書かれたことを改めて知ると、まったく古さを感じないばかりかむしろ新鮮さを感じてしまう連作集。この本を持ってアメリカ西海岸をのんびりドライブしてみたくなる。