一流の神話の読み方
★★★★☆
文章を読みやすくする配慮から話し言葉にすることは、私の好みではないが、その点を差し引いても、平易な言葉や日常的な表現を用いて、わかりやすく、とっつきやすく、面白く、ユング心理学流の神話の読み解き方を示している。神話が文章化された瞬間に収斂させつつ、元形として読み解いていくところが、本著の特徴である。
これは日本神話についての解説であって、神道について論ずる書ではない。後者を期待する人には不向きである。ギリシャ神話やエジプト神話を始めとする世界の神話に興味を持っている人には、一読の価値がある。記紀の素っ気ない文章から、ここまでの面白さを引き出した著者が、お見事。
ユング派の理解の仕方とはこういうものであったかと、腑に落ちた気がする。特に、他のユンギアン批判が痛烈で、明快で、私には面白かった。
神話と聞いて「胡散臭い」と思ったあなた、是非読んでみて下さい
★★★★★
人の持つ「イメージ」というもの、これの個別的表象の代表が夢ならば、集合的、普遍的な代表的表象は神話。 これを心理的symbol(象徴)として読み解いていくと人の心の深層が垣間みえて来る。日本神話を題材にして、ユング心理学の基本手法である”増幅法”これを用いてエジプト神話をはじめ”元型的”シンボルの意味を明らかにしてゆこうとする意欲作であった『ユング心理学と日本神話』をベースにその後の新たな見解の変化、時代の変化等を加味し、結果的に全く新たに書き下ろした内容になって出版。しかも新書と買い求めやすい値段で。
夢の読み解き、人の持つ「イメージ」というものを、より良く理解したい人は必読。 因みに、日本神話(記紀神話&出雲風土記)を扱った学術研究としても、松前健 立命館大学教授と並んで、屈指の素晴らしさだと思います。