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大盗禅師 (文春文庫)

価格: ¥740
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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これは・・・つまんないと思うけど・・・ ★★☆☆☆
禅師、由比正雪、鄭成功の間をふらふらするのは主人公ばかりではなく、作者も、のような気がします。決めないでだらだら書く、ということは司馬遼太郎に限ってないとは思うのですが、そんな印象を持ちます。だから全集に収録したくなかったのでは? と勘ぐってしまう。
大司馬遼太郎の著作として異質なので、そういう意味で読む価値はあるように思います。
底知れぬ作家 ★★★★★
代表作はほぼ制覇したと思っていたのに、まだこんな快作が残っていたとは・・・!!
司馬先生、本当に底知れない作家ですね。大作家にして大歴史・風土・風俗・宗教研究家でもある
司馬先生のアナザー・サイドとして呪術、幻術といったちょっとオカルトがかった分野の
マニアの顔があります。何たってデビュー作が「ペルシャの〜」ですもんね。生涯を掛けた
テーマだった「日本人とは何ものか」を様々な角度から検証しながら活写していった作品郡
はもちろん素晴らしいものばかりですが、まるで余暇を楽しむように書かれた作品群の中でも
本作は傑作に入ると思います。ラスト、出きれば仙八と禅師には乗っ取った船で帰国する
よりは東南アジア大冒険の旅にでてもらいたい・・・そんな続きが読みたいなぁ・・・
作者が全集に収録するのを拒んだという本作。いい作品だと思うんだけどなぁ。 ★★★★★
摂津の国は住吉の浦で漁師の手伝いをして暮らしていた浪人剣客浦安仙八。幕府の浪人の取り締まりが厳しくなりはじめたころ、幻術を使う不思議の僧、大濤禅師に誑かされて由比正雪、丸橋忠弥らと、浪人のいない住みよい国を目指して幕府転覆の陰謀に突き進んでいくことになる。滅亡の危機に瀕している隣国・明を手助けして恩を売り、明の復興後、その兵力を借りて幕府を倒す計画を立て、海を渡り、国姓爺鄭成功と共に清軍へと突き進んでいく・・・。波瀾万丈の伝奇時代小説です。
物語の展開は先が読めず(なにせ明まで行ってしまいますから)、とてもおもしろい。また、二人の主人公、由比正雪と浦安仙八の人物像がすばらしい。言動は大胆で自信家、なのに小心で臆病者、すばらしく切れる頭を持っているくせに山師の雰囲気を漂わせ、門弟三千人を謳っていた由比正雪、本当にこんな性格だったんだろうと思えてきます。
かたやもう一人の主人公、浦安仙八は、剣の腕は一流ながら出会う人出会う人に影響を受け、ふらふらふらふら流され流されて、正雪に師事していたかと思えば明に渡って鄭成功に心酔し将軍の位まで授かってしまう。それでも「自分」を見つけられずに、さらに流される。
強い「自分」を持った男と、「自分」を見つけられずに流される男。二人が出会ったことで繰り広げられる壮大な物語。楽しめます。
仙八は、笑う ★★★★★
謀反人というなんともきな臭い生き物が群像として描かれているわけですが、浦安仙八を中心に据えて物語を読む(というより実際彼がこの物語の狂言回しなのですが)と、「イニシエーション」についての物語として読むこともできます。
一人の青年が少年期を過ごした小世間を出て大世間に飛び込んでゆく。その大世間で青年は、そこで生きることに練達した「大人」たちに翻弄される。そんな世間でなんとか凌いで生きているうちに、青年は「大人」を偉くしているからくりを知り、世間とそこに生きる人の運命の卑小な実体に気づいてしまう・・・こうして仙八は世間で生きることに練達する、つまり「大人」になるわけですが、この物語にはもう一段階先がある。仙八は笑って謀反人になるのです。これはなんとも、痛快だ!

この作品は司馬先生ご本人が全集への載録を拒んだという曰くのあるものなのですが、少しでも興味をもたれたのなら、その辺の来歴は気にせず手にとって読まれることをお勧めします。
わたしはこれ結構好きです。良いと思うんだけどなぁ・・・
トロッと読める本。 ★★★★☆
 「竜馬がゆく」のように、パリッと読める本ではない。しかしトロッと読める。
 とにかく色々な設定描写が微妙。たとえば主人公。これは必ずしも「大盗禅師」ではない。「仙八」という人物を中心に物語りは描かれる。
 ところがこの「仙八」も決して主人公らしく英雄になりきれない弱さがあり、微妙。
 この「仙八」に付き従う「蘇一官」。彼も微妙。彼を中心に織り成される幻術の世界と現実の世界、これも微妙。
 すべてが微妙ゆえ、決してパリッとは読めない。でもだからこそトロッと何気なく読める。そういう本。