下巻の《巻末特別対談》で、作者が浅田彰と語り合っているコトバをテコにしつつ、アノ時代、アノ感性について2度考えさせられ、2度楽しめる作品になっている。
ぱっぱかぱーな主人公に、立腹しながらペンを入れていたと述懐する岡崎京子と、むしろその捨て身のギャル像に好感を覚えている浅田彰の対照がおもしろい。
私もどちらかといえば、サカエちゃんの、裸足で駆けてくようなスピードに、惹き付けられたクチである。
だが、そのスピードの正体は、宙吊りの円環の中で加速されていた80年代の「あおり」によって、「おいてきぼり」を恐れるがゆえの走りの効果にすぎなかったのかもしれない。
哀れな走り?
いや、たとえ哀れであってもヒトは輝くのだし、それに惚れ込んでしまうヤツラだっているのだ。良いではないか、いけないか!