これでいいの?次作「石の猿」に期待
★★★☆☆
リンカーン・ライムとアメリア・サックスを主人公とするシリーズの第三作。
これまでの「ボーン・コレクター」や「コフィン・ダンサー」との違いは、
圧倒的な存在感を持った殺人鬼や暗殺者が登場しないこと。これらの敵役を
期待する読者には「アレッ?」との肩すかしを食らう感じ。
このシリーズの面白さは、ライムとサックスの二重性にあります。体が不自由な
ライムが科学捜査を駆使して犯人を特定して行くプロセスと、時には対立・反目
しながらも協力して実働部隊としてのサックスの活躍が見物のはず。
つまり、犯罪を通じての二人の関係性が強力な敵(犯人)の存在により生きてきます。
今回の「エンプティー・チェア」は、上記の趣向とは異なります。
繁栄する種は成長し、進化する
★★★★★
本シリーズはNYが舞台になっていますが、本作品ではライムの手術のためノー
スカロライナ州に訪れている設定になっています。動けないライムがNY以外で活躍
するのはシリーズ初になりますが、さすがディーヴァー、ノースカロライナ州の
歴史と本作品でキーのひとつとなる昆虫の生態に関しての綿密な取材を基にディ
テールが書き込まれています。本シリーズはノンスットプ・ジェットコースター・
サスペンスと冠されますが、圧倒的なディテールがストーリーの奥行きをもたせ
ています。ストーリーだけ追う分には読み飛ばして支障はないのですがシリーズ
愛読者には各作品のディテールも楽しみの一つとなります。
またライムとサックスの関係もシリーズを重ねるごとに変化しており、今回は
サックスのある意味屈折したライムへの感情がシリーズに厚みをもたせています。
タイトルの『エンプティ・チェア』とは容疑者に対する精神科医の心理的アプ
ローチの手法(実在するかは不明)として描かれていますが、もうひとつライムの
ストーム・アローの電動車椅子にもかけられています。どう関わってくるかは
読んでのお楽しみとしておきましょう。
どんな猟奇殺人なんかよりも恐い事件
★★★★★
いやいやいや、とてもおもしろかったです。最後のページをめくるまで。こんなに最後の1ページをめくるまで(最後になるほどよりいっそう強く)楽しませてくれる本にはなかなか出会えない。毎回ラスト100ページあたりからぐわーっと盛り上がるもんだから、最初のほうがちょっと退屈に感じてしまうくらい。でも読み終えれば、その退屈に感じる前半部分にこれでもかと伏線がてんこもりなんだよなぁ…ボーンコレクターを手にしてから、このライムシリーズを次々に読んでます。猟奇殺人を扱うばかりでなく、毎回毛色の違う事件と背景で楽しませてもらえる。今回は自分には全くなじみのないアメリカ南部の湿地が主な舞台ともなり、想像するのも難しいんだけど勝手に映画「ニューワールド(コリン・ファレル主演)」なんかの開拓時代のイメージ?とにかく、圧倒的な自然って都会育ちには脅威です。そして排他的な田舎も。その小さな街を覆い尽くす影。どんな猟奇殺人なんかよりも恐い事件かも、なんて最後はかなりぞっとした。こういうの実際にあるんだろうなって映画「エリン・ブロコビッチ(ジュリア・ロバーツ主演)」なんかを思い出したりもして。それでいてさわやかな読後感。うーん、お腹いっぱい。いったい次はどんな事件で楽しませてくれるのか…今作が最高傑作と呼ぶ声もあるのがちと心配ですが。笑
さすがのハラハラ感
★★★★☆
リンカ−ンライム・シリ−ズの3作目。今回もアメリア・サックスとのコンビで難事件に挑みます。
舞台が南部の湿地帯と言うことで、前2作とは雰囲気が変わりますが、緊張感はさすが!
途中、少しだらけるところもありますが、中盤以降はその文体にひきつけられ、もう逃れることが出来ません。
さすがのどんでん返しに、最終ペ−ジを閉じるまで安心できず、はらはらの連続。
次作に期待がかかります
師弟対決
★★★★★
2002年度版このミス10 11位。
2001年文春ミステリーベスト10 3位。
<リンカーン・ライム>シリーズの第3作の本作品の見所は、リンカーン・ライムとアメリア・サックスの師弟対決だろう。連続女子学生誘拐犯の容疑者の少年に純粋な心を見いだし、少年を逃がすアメリアと、リンカーンとの追跡劇は、なかなか面白かった。
もちろん、作者の特徴である「どんでん返し」と「科学捜査」の面白さも随所にちりばめられた好作品である。
また、他のシリーズ作品と比較して、アメリアの内面にフォーカスがあたっている部分が多い印象を受けた。
他の<リンカーン・ライム>シリーズは、「ボーン・コレクター」「コフィン・ダンサー」「石の猿」「魔術師」「12番目のカード」。シリーズ次回作は「The Cold Moon」。