1992年に出た単行本を上下巻に分冊、文庫化したもの。
　世界の変容と自己を扱った作品群のひとつに位置づけられるだろう。
　入れ子状になった物語がたがいに溶け合いながら、混沌を深めていく。ちゃんと読んでいないと理解できなくなる。分厚い本でもあり、体調が良くて時間のたっぷりあるときに挑戦すべきだろう。
　下巻では魅力的な「物語内物語」が展開されたあと、再び混沌へと落ち込んでいく。結末は圧倒的な重量感。
とにかく、再読しなければならない本だろう。

神林長平のいつもの世界。
幾重にも重ねられた
事象、現象、幻想、言葉
総てが絡み合い、重なり合い
独自の世界を紡ぎ出してゆく。