ポスト岡崎京子と「退屈」なセカイ
★★★★★
凹村戦争は80年代の引用が大量に出てくる。
誰が言ったか80年代は「静か」な時代だったらしい。アングラで渋谷系で引用句でなんとなくクリスタルな消費されきった死骸が静かにざわめく。そこはもはや想像力が限界に達した場所。「外側」に「新しい何かがある」なんて想像しない凹村の住民と一緒。
それは西島大介が敬愛する漫画家岡崎京子に言わせると「退屈」らしくって、でも彼女はその「退屈」が好きだったらしい。自分のマンガのタイトルにしてるぐらいだし。
じゃあ西島大介はその「退屈」が好きかというと、多分大嫌いなんだろう。だって全編を通して繰り返される「退屈」ってフレーズは岡崎京子のなあなあ感とは似て非なるベクトルで絶望的だ。
『リバーズ・エッジ』のカタストロフィを自ら引き起こしちゃえ! だって、退屈だから! っていうセカイ系的に正しい中二病精神で「退屈」をぶち壊した主人公。
でもいざ破壊したはいいものの、911テロめいたビル破壊でさえもはやマジな反応はできなくて、それは多分凹村の文化の中心地レンタル・タツヤの映画的な想像力以上のものは持てなかったということだと思う。悲しいことにそれが今の「現実」。
結局凹村の「外」に行ったとしても現実感は得られないし、だから受験会場だって見つからない。
映画みたいな現実に対抗するのに、映画的な想像力は必要ない。
セカイ系に対抗するためにセカイ系的な想像力に頼っちゃいけない。
本当にセカイ系を終わらせたのはムチャクチャバカでセカイ系の嫌いな社会性を徹底的にやりつくしたルルーシュみたいなもんだと思う。
だからこれは西島大介が自分で言ってたようなアンサーじゃなくて、セカイ系にアンサーできなかったメタセカイ系なんだと思う。
平凡以下
★☆☆☆☆
ストーリー、ビジュアルも低レベルだが、思想があまりにも幼稚すぎる。
210ページと211ページの黒地に白抜き文字で書いた文章が作者の主張したかったことだろうが、2ちゃんねるや自分のブログに書き込めばいい程度のつまらない内容だ。
とても創作物として発表するレベルではない。
作者には悪いが、ブックオフで立ち読みする価値も無い駄作と言わざるを得ない。
SFかな?
★★★☆☆
イラストがとてもかわいいです。
内容自体は、SFというよりは青春ファンタジーみたいなものですかね
SFものを期待した方には、ちょっと拍子抜けかな?
ストーリー的には少し、強引な部分があるようにも思えますが
この雰囲気はとても心地いいな。
計算しつくされたテキトー
★★★★☆
気が利いていてやみくもなストーリーはひどく美しいのに、あとがきやら東浩紀さんによる「きみとぼくの非日常に隠されたメタとネタと萌え」の帯文句やら、そういった作品外のことで損している気がします。かといってしかし、あとがきがないと最後の一文前後の展開が納得できないし、それどころか全体に漂う絶望感をまとめきれない気もしますし…もしかしたら、あとがきは作者の作品に対する言い訳なんでしょうか。この本を取り巻く環境すべてをパッケージとして、凹のつく登場人物達が共通して持つ、突き抜けた諦観を読者に転移することが目的だったのではないかと、方向性を間違って深読みしてしまうくらいに色んな意味で心に残る本です。もちろん、ただ残念ということじゃなくて。SFをネタにした作品としてではなく、ただのがむしゃらな青春劇としてこの本に出会えたら良かったのになあ、と少し思います。
絵も話もさわやかでいいマンガです。
★★★★☆
「凹村」はもちろん「オーソン・ウェルズ」のもじり。でもSFを知らない人でも楽しめます。でも知っていたほうが楽しめます。パロディっちゃあパロディだし。
西島大介氏のマンガは、少ない線でデフォルメされたかわいいキャラクターと、勢いのあるストーリーが見どころ。けど雑じゃなくって、意外と情報量の多いマンガです。でもサラッと軽い気持ちで読めて……こんな小さなレビュー(失礼)じゃいいつくせません。
とうぜん「面白い」のだけど、このマンガどちらかといえば「すごい」。深読みされてボロが出るマンガは多いけど、「深読みのできない」マンガはほとんどありません。『凹村戦争』は実はテーマがとても深いので、深読みできません。ということでこのマンガは変に考えず、さらっと読み流すのがお薦め。