伝説の大魔道師グラチウスに囚われたシルヴィア姫と盟友マリウスを追い、中原をはなれ遠国キタイに足を踏み入れるグィン。供をするのは、黄昏の国の女王で大ガラスと妖艶な美女とに自在に姿を変えることができるザザ、狼王ウーラ。
黄昏の国、人が入ることがない霊魂の国「ノーマンズランド」を経て、やってきたのがキタイの魔都フェラーラ。この描写がかなりエキゾティック。表題となっている女王にして魔女のリリトの容姿や宮廷の描写もかなりのものだが、地下に巣食う人蛇アーナーダのグロテスクなこと・・・。ここは著者得意の饒舌な描写をじっくり味わってほしい。またエピローグでは、グィンの正体を示唆するかのような出来事が語られる・・・。
個人的にはグィンを慕う魔女ザザもお気に入り。ストーリー的には一本道で芸も小技もないが、全編を覆うおどろおどろしさや辺境世界のエキゾティックな描写は、初期のグィンサーガが持っていた風味を思い出させてくれるかのよう・・。
初期の外伝の中で、辺境を放浪するグィン一行を描いた「風雪の女王」や「時の封土」がけっこう読めたが、それらの作品に相通じるところがある。