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騎乗 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

価格: ¥735
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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ややJ・アーチャー風。 ★★★★☆
「17歳の障害騎手ベンが突然厩舎を解雇されたのは、父親ジョージの策略だった」
横暴で強引な父親と彼に反抗的な息子、という構図かと思いましたが
実は、父親は若くて(30代後半)好人物、息子も父をしっかり尊敬しているという、
とてもよい親子が主人公なのでした。
競馬場やレースシーンはおまけみたいなもので、
むしろフランシス版『めざせダウニング街十番地』という感じ?
競馬ミステリを読みたい!と思って読むとちょっと違いますし
ミステリとしてもいかがなものかと思いますが、読後感は悪くないです。
それにしても、こんな17歳がいるわけない、と思うほど
大人びていてなおかつ父に従順な少年です。いい子だ。
ディック・フランシスの描く理想の父子関係 ★★★☆☆
ディック・フランシスの小説を競馬ミステリと呼ぶのは少々乱暴な気がする。
騎手の経験を生かした臨場感溢れる馬の描写が必ず挿入され、魅力の一つと
なっているとはいえ、物語の舞台は競馬界とは限らないからだ。

この作品「騎乗」でも主人公は騎手だが冒頭から職を失い、父親の選挙運動に
半ば強制的に協力させられるところからストーリーは始まる。
特筆すべきは、大人の男を主人公としてきた今までの作品とは違って今回の
主人公が17歳という若さであることだが、やはりディック・フランシスの小説の
語り手らしく、冷静で賢く優れた資質の持ち主で危なげがない。
実業界で成功を収め、政界に進出しようとしている父親はカリスマ性を持ち、
将来は国家元首の地位の可能性まであるほどの!!人物だが、主人公の青年とは
やや距離をおいた関係を保っており、多くを語ることなく教え導く。
二人はお互いに敬意をもって相手に接し、みだりに干渉することはしない。
男同士の友情の理想とも言えそうなこの父子の交流を軸に主人公の精神的な
成長が無駄のない簡潔な文章で描かれていく。

ミステリーとしては起伏に乏しく、クライマックスも意外とあっけない幕切れに
終わるのが残念。主人公の周囲の人間関係の描写もリアリティがあって楽しめるが、
親子に敵対する人物の造型には少々説得力がないような気がする。
ただ、主人公があきらめざるを得なかった夢(プロ騎手)への思いを語る場面などは
作家の実体験が投影されているのか、胸に迫るものがある。
やはりディック・フランシスの!小説世界の魅力には抗しがたい。

とても新鮮!! ★★★★☆
この作品の主人公は17歳で、今までのフランシスの作品とはちょっと違っています。今までの主人公は大体が30代とかで冷静で頭の切れる人物像が描かれていたと思います。が、この作品では17歳ということもあって、時には子供らしい繊細な所も描かれていて、とても新鮮な主人公像でした。ただやはり途中からみるみる成長していく姿が伝わってきて、最初の17歳の時と最後では大きく違っていますが。また、派手な場面などはありませんが、心情をとてもよく表現している作品だと思います。私はこの主人公ほど若くありませんが、私がフランシス作品を読み始めたのは13歳の時で、その当時のことをなんとなく思い出してしまいました。10代の方が読めば私以上に感情移入して読めるのではないかと思います。