良かった点
・「パブ」という自己の複写体をメインに自己とはなにか,という一貫したストーリーは面白かった
・それなりにSFとしてありえない状況について説明ができていた
悪かった点
・自己認識を主題としたせいか,イマイチ内面描写に偏りエンターテイメントとしてはカタルシスを得られない内容だった
・背景描写がやや不足と感じた,そのため感情移入が難しかった
前作と共通ですが,やや作者が独走し読者を置き去りにした印象でした。とはいえ古い作品ですので,この時期にここまで今現在問題とされている内容を作品として纏め上げた氏の才能には脱帽なわけですが。
「あなたの魂に安らぎあれ」から遡ること130火星年(260地球年)。
火星第一の都市秋沙市では、対話によって成長する人工的な魂とも言えるPABが一人一台まで普及していた。だがPABを統括するシステム、アイサックが起動した時に情緒未発達児の真人が「自分はアイサックであり、新たな帝王だ」と言い出した。
真人を乗っ取ったのはアイサックなのか、前帝王のPABなのか?
地球国連アドバンスガードの梶野少佐が登場したときはぞくぞくしました。
機械人のアミシャダイが「あの言葉」を発したときは感動すら覚えました。
一読の価値はあります。是非。