10年経っても色あせぬ名著
★★★★☆
中国文学研究家として名高く、正史「三国志」の共同翻訳に携わり、また単独で「三国志演義」の翻訳も行った井波律子氏が三国志を語る一冊。1990年から1995年にかけて書いた作品群が中心だが、その輝きは10年以上経った今も色あせていない。
三国志自体の解説と、曹操やその一族、諸葛亮、周瑜、蜀の五虎大将などメジャーな人物評のほかに「魏の諸葛一族」では諸葛誕の生涯を詳細に記し、その人物像に迫る。また、後半では正史「三国志」に隠された陳寿の意図を解説するほか、「日本人と諸葛亮」では土井晩翠、内藤湖南、吉川英治、陳舜臣、花田清輝の作品からそれぞれの諸葛亮観を分析する。
井波氏には是非とも「この10年での三国志の変化」も解説していただきたいものである。