理論系の工学部生の再入門用に
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数学科の学生は専門であるため、ε-δ論法に基づいた厳密な理論を学ぶようです。しかし、工学系の学生は必ずしもそうではありません。
私は工学系出身ですが、当時の数学の講義では、理論は最小限に済ませて、計算演習の方に重点が置かれていました。
しかし、専門が進むにつれて厳密な数学を学ぶ必要が生じる場合があります。例えば制御理論、情報理論、数理計画法などを研究するような場合、厳密な数学が必要となります。
専門課程では、解析入門や解析概論を一から読んで復習するような暇はありませんし、大まかな結論は分かっているので意欲も持続しません。
そのような状況で解析学をブラッシュアップするには、この本は良書であると思います。実数の連続性や連続関数の性質など、抜け落ちがちな内容についてはコンパクトにまとめてありますし、細かすぎる内容については紹介程度にとどめてあるため、通読するのが大変ということはありません。当然、既知の内容も多いのですが、意外な再発見もあり、楽しく読めました。
下巻と合わせて、理論系の工学部生の再入門用に薦めたい好著だと思います。