散切り頭を叩いてみれば・・・
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激しい攘夷運動のあとに待っていたものは、“散切り頭を叩いてみれば文明開化の音がする”と唄われたほどの西欧化の波だった。
待ち望んでいた王政復古を果たすも、民衆の暮らしはいっこう楽にならない。その煩悶のなかで、木曾街道・馬籠本陣の当主 青山半蔵は56年の生涯を閉じる。
半蔵とは作家・島崎藤村の実父である。
父祖の代からの街道沿いの生業と暮らしぶりをつぶさに再現しながら、嘉永年代から明治半ばまでのこの国の歴史と、そこに翻弄されるしかなかった人間の生き様を描き出している。
日本史に疎いため手に取るのに時間がかかったが、ヒロイズムや情緒に流されることのない淡々とした筆致は、かえって一層の迫力を持ってその時代をあぶりだしていた。