いつも思っていることだが、既存の楽器、たとえばサックスをバリ島の原住民やアフリカの部族のもとにメンテナンスの仕方も含めて、置いてきたらきっと全く異なる素晴らしい音楽を彼らは作り出すに違いないと思う。それはケチャに根差した新しい音楽であったり、アフリカン・オリジン・ビートだったりするに違いない。
キースはそれと同じことを頭の中でできる希有な人間だ。
キースのアーシーな部分に着地したクラビコードは、既存の概念から解き放たれ、全く新しい音楽を作りだしていく。その音こそリスナーの求めているキースなのだと思う。
ECMの24ビットベストにここから3曲収録されているが、楽器の性質上、どうしてもナニヤラバッハのリュート組曲ハニャニャ調とかハニャラディ作曲チェンバロのためのプレリュード風の作品かな、という印象であった。まぁバロックねぇ、たまにはいいか。ところが実際全部を聴いてみるとこれが実にキースジャレットとしかいいようのない演奏になっているので驚いてしまう。たしかにdisc2はバロック風味が強いのだが、楽器の性能を試しながら曲の流れを探っているような1、なんといってもロックやフォーク、ポップを吸収し尽くしたキースでなければ出来ない曲、4、6、10が凄い!Disc1のほうは驚くほどキースジャレットなのだ。うまく言えないので是非聴いてもらいたいなぁーなんて。
もう一つキースでないとやらないことの一つに、うめき声があるです。この作品では、いつものキーキーじゃなくて、「うおおおおむむむむ~」とスピリッツ的な凄い低音で迫ってきます。なかなか恐いぞ!(笑)