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龍の棲む家 (文春文庫)

価格: ¥540
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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優しく描かれているが・・ ★★★☆☆
本の厚みがほどよく読みやすそうで、タイトルが意味ありげ、
僧侶で芥川賞を受賞した著者の最新の小説ということで読んでみました。

市役所を退職後、認知症の症状が出た父親を自宅で看る離婚歴のある次男。
父の気に入りの散歩先の公園で知り合った、やはり離婚歴のある元介護士の女性が、やがて自宅へヘルパーとして通い始め、自宅へ棲むようになりました。
淡々として、厭味は全くないのです。花の名前も沢山挿入されています。
でもどこか・・・ちょっと男性の都合のいいような設定、ヘルパーの女性の苦い過去も、奥行きが足りないような描き方におもえてあまり入り込めませんでした。

心に残ったのは、お世話になる側が、
一番お世話をしている人に対して無意識に持つ自責の念が、その人に辛く当たってしまう原因じゃないか、というところ。切ないが、納得がいき、リアリテイを感じました。
他人にお世話をするより、される立場になるほうが、大変こころの修行を必要とするものなのでしょう。ここをわかった上で、認知症の男性からお習字を習う佳代子は真の介護をしているんだなあと。




言葉の意味を超えて通じあう何物か ★★★★☆
自然、主人公の父親に自分の父親が重なり、主人公と同じ境遇に自分が置かれたときを考えずにいられなかった。
認知症になったと父親と、主人公らとの「会話の微妙なかみあわなさ」の描写が丹念で見事だと思った。
言葉の次元ではかみ合うことが減っていく親子の会話。心は言葉に振り回されやすく、親子の関係そのものが壊れていくと感じる人もいるだろう。
そこを、あえて症状と切って捨てるのではなく、「言葉の意味を超えて通じ合う何物か」を模索して、提示してみせる。
いささか教科書的に感じるほど、よく調べてあるものだと思った。認知症の進行の様子や対応の仕方なども含めて、思慮深く再構築されている。
佳代子の存在といい、小説だから起きる幸運もいっぱいなのだけれども、いつかくるときを思い描く手がかりに勧めたい。
認知症をご存知ない方にお薦め ★★★☆☆
作中で使われている「痴呆症」という言葉は現在「認知症」となりました。
主な登場人物である認知症の父、寄り添う息子、専門知識を持つ女性、それぞれの人物像が思い描きやすくてすんなりと読めました。
認知症の方と関わる上での、人間味のある教科書的な感じを受けました。美しくまとめられていると思います。
あまり認知症のことをご存知ない方にお薦めです。普段から関わりのある方には少し綺麗事のように感じられるかもしれません。
龍とは何か? ★★★★★
自分の親が呆けてしまったらどうなるだろうか?親は、家族は、自分は?という思いからこの作品を読みました。この作品には佳代子という介護のプロが登場します。この佳代子はミステリアスでありながら体温を感じさせる存在として描かれています。これがまず非常に良かった。ただし、こんな存在が現実の、つまり私の傍に現れるかどうかという点で「やはり小説の世界だな」と感じざるを得ません。呆けた主人公の父が何を求めているのか?作中で「龍は失った玉を探し求めている、そしてその玉とは団欒である」という展開になって来ます。読みながら私は、呆けてしまった人は正に周囲の人間からは中々理解されにくい、一種の怖ろしさと尊敬、即ち畏怖の対象でありこれはそのまま幼いころから話に聴き、絵となった姿を見て非常になじみ深い龍そのものではないかと思いました。終始静かな語り口調で、呆けた人に対してどう接するべきかについてひとつの方向性を示した所も中々に腑に落ちます。
団欒 だんらん 暖嵐 ★★★★★
読みやすい文体なのに、その底流からは人を優しく暖かい視線で見てい
ることがひしひしと伝わってくきます。
【淡麗】と形容したくなるような作品です。

アルツハイマー症の老人への向き合いと介護をテーマにした小説ですが、
重過ぎずに、なぜかほっとするような幸せな読後感を覚えました。

つかの間の団欒、ぬくもり、安心感、揺れ、暴れ、化身・・
そんなキーワードが散りばめられた作品です。