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女帝の古代史 (講談社現代新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 講談社
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見事な「中継ぎ論」批判 ★★★★★
 この著は、最近、次々に刊行されている「古代の女帝論」としては、出色の作品だ。
 日本の双系制(この本では又方という表現が採用されている)を踏まえ、中国からの律令制と日本の古代からの基層との両立と変遷関係を各女帝のそれぞれの性格を通して、実に説得的に描いている。
 女帝の存在を政治史的な視点だけではなく、社会史的な観点、国際関係の変化を含めた幅広い視野から論じているからである。
 井上光貞の読み直しの必要性については、ジャーナリストの中野正志著『女性天皇論』で述べているが、専門家ではないため、ややジェンダー論に傾きすぎ、説得力に欠けている面が感じられた。だが、この著書は、中野著の欠点を見事に補強している。各女帝のまちまちな性格についても、著者の推論はあるにはしても、史料に忠実だから専門家もとりあえずは反論できまい。
 近著の瀧浪貞子著の『女性天皇』のお粗末さ比べると、著者の視野の広さは群を抜いている。私は、井上『古代の女帝』以来の女帝論を読み続けてきたが、この著書の主張はまずは当分、ひからびることはないだろう。
 余分なことだが、水谷千秋や著者のような有能かつ公正な学者を非常勤講師のままに放置している歴史学界のお粗末さには、私もその一員ではあるが、義憤すら感じた。視野の広い学者ほど、うとんじられるのが、歴史学界の体質のように思われる。 
 ぜひ、「女帝=中継ぎ論」を批判した中野著の『女性天皇論』の補強史料として読んで欲しい。
 著者が述べているわけではないが、中身は古代史学者による学界批判の快著ともいえる。帯にある「画期的論考」も決して誇張とはいえない。文章も読みやすい。
女性天皇の存在意義を探る ★★★★★
著者と出版社との思惑が一致するからといって、読者の興味を惹く史書が必ずしも上梓されるとはかぎらない。一般向きの歴史書というふれこみで刊行された多くの類書はほぼ同じ轍を踏んできた。

その点、古代日本史に不案内な読者をもグイグイ引っ張っていく本著の面白さは秀逸。神功皇后の神がかりを卑弥呼になぞらえているという「第一章」の記述から、「第三章」の、中大兄皇子の母・皇極天皇が蘇我蝦夷と競い合った「雨乞い合戦」、あるいは、彼女が斉明天皇として再び即位した後、自ら百済救援軍の後方支援に向かったことまでを、スーパー歌舞伎を彷彿とさせる早いテンポで描いた筆致は、快刀乱麻そのもので小気味よい。

著者は、古代日本の為政者や支配階層が、中国・唐時代の律令制度を重用したがために、それまでの日本になかった男尊女卑の思想が浸透したと述べ、女性統治者が姿を消していった理由と推論する。

女帝の歴史を探ることによって、日本独自の方法や習慣のすばらしさ、女性の社会的地位が安定していることの得がたさなどを読者に明示し、女性天皇の存在意義を暗にうったえ、21世紀の日本の在り方を私たちに示唆しているのである。「女帝の古代史」は、秋の夜長、耽読するに十分な一滴である。