大海人王子(天武天皇)の壮大な野望
★★★☆☆
壬申の乱は、天智天皇没後に正統後継者たる大友王子に対して軍事クーデターを起こして皇位を奪取した古代最大の大乱であるが、謎が非常に多い。本書はこのクーデターにおける様々な人間模様や謎を追う。大海人王子は天武天皇として即位後「陰陽寮」という官僚組織を作り、陰陽道を独占した。天武の道教、陰陽道に対する。これまで大王(おおきみ)といわれた最高権力者の称号が天皇となったのは、道教の神たる天皇「てんこう」に由来するらしい。また記紀に天照大神が子ではなく孫を降臨させるくだりは、天武の皇后だった持統天皇が子の草壁皇子ではなく孫の軽皇子の即位の正当化のための作為だともいわれる。いわゆる「日本イデオロギー」は大化の改新から壬申の乱にかけて作り上げられたものであろう。