中国統一の余勢を駆って全盛期を迎えつつある唐。
中央集権体制を整え、国力を高めつつある大和朝廷。
勝敗の帰結を決めたのは律令体制の完成体といえる唐とまだ豪族集合体から脱しきれない日本という国家の成熟度であった。
日本と中国の最初の正面衝突とも言える白村江の戦いを主たる舞台とし、主要なプレーヤーである唐と大和朝廷や三韓諸国を平行して描くことによって単なる一国史ではなく、ダイナミックな東アジア同時代史を描こうとする桊??図はなかなか興味深い。これまで見ていなかった戦乱の同時代的特徴がよく見えるようになった。
孝徳朝や斉明朝の政治も朝鮮半島や中国との関係性を入れた視座から見ることにより、遙かにその意図が見えやすくなっている。
特に蝦夷征伐を水軍力の増強とつなげ、朝鮮半島計略の重要な一部となっていたという記述は今まで考えてみたこともなかった。当時の大和朝廷の政治戦略の範囲とは予想以上に広大なものである。
中国側に視点を移すと、隋の滅亡の原因となった高句麗を重要視することは当然であるが、海の向こうの日本も含めた朝鮮半島経営の構想を有していたことは意外の感もあった。
幾分、筆が滑りすぎている感もあるが、丹念な研究の結果であることが著述の隙間からも十分に読み取れる。
日本・䡊??国に限らず古代史に興味のある方々には一読を勧めたい。