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樹をみつめて

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: みすず書房
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白眉は「戦争と平和についての観察」 ★★★★★
第2章「戦争と平和についての観察」は,『西欧精神医学背景史』を彷彿とさせる,歴史の知識を駆使した傑作です。
近年のきな臭い世界情勢の中でこそ,もっと読まれるべきではないかと。
原定家の「風の上の星はひかりはさえながらわざともふらぬ霰をぞ聞く」という絶唱でしめる構成もいい ★★★★★
 「戦争と平和についての観察」は『関与と観察』の中で書かれた、さまざまなトピックスをひとつにまとめたような文章。《戦争を知るものが引退するか世を去ったときに次の戦争が始まる例が少なくない》(p.56)というあきらめのような気分で書かれ、1)中クラスの国家にとどまるべきこと2)アングロサクソンを挑発しないこと3)近隣の恨みを買わないことを基本としたビスマルクを罷免したヴィルヘルム二世の政策によって、ドイツは世界大戦二連敗という唯一の体験をすることになるというあたりを力説していたのが新味。あとがきでは《日本の第二次大戦は欧州の第一次大戦に相当する。まだ、日本はほんとうの試練に逢ってないのかもしれない。歴史と地理と偶然が日本を甘やかしてきた》という悲痛な文章が書きつがれています。

 「睡眠医学からの助言」は個人的に納得のいくことばかり。《睡眠は二時間ごとに浅くなる。夜目覚めるのは二時間置きか、二時間の倍数である》《このように二時間をセットとして睡眠時間は四セットで一晩分である。一セットには睡眠の全要素が入っている》というのは実感できますし《時々、睡眠は四時間で大丈夫だという人がいる。たしかに一セットの睡眠が一番深く、第二セットがその次という人が多い》というのは以前の自分でした。しかし、《年をとると、第一セットの眠りも浅くなってくる。睡眠の深さを四段階に分けるとたいていの人が第四段階には達しない、睡眠薬も第三段階どまりである(第四段階まで達するという薬は夢遊病を起こしやすい)。酒は第二段階を長引かせる。そして、夢が足りない》(pp.12-124)ということは気をつけよう、と。
「オトナ」のエッセイ集 ★★★★★
宮崎哲弥氏の名言に「カウンセリング如きで世界を語るな!」というのがあるが、実際、精神医学の専門用語をそこここにまぶしながら、愚にも付かない駄弁を弄する精神科医には洵にうんざりさせられる。勿論、中井氏はそのような精神科医ではない。自分の専門に関する記述があっても、それは議論の土台になっていて、思索の中に溶かし込んであるのが殆どなのである。その例が本書の大論文「戦争と平和についての観察」であり、大読書家としての氏の思索力を示して圧巻だ。また、氏の敬愛する神谷美恵子についての長文の解説は、主として神谷と書物との関りを語って間然とするところがない。その他のエッセイ群についても、深い読書体験を背景にしながら、静かな口調で語られているのが印象に残る。本として美しいことも、付言しておこう。