格調の高さとシャープな切れ味
★★★★★
このCDは編曲物も含めた6人の作曲家によるバロック・チェロ・ソナタ集で、シュタルケルの高潔とも言える音楽性、そしてバロック音楽への造詣の深さと鮮やかなテクニックの冴えが顕著な一枚。バッハだけが1963年の録音でそのほかの曲は66年だが、マーキュリー・リビング・プレゼンスの高音質録音も魅力のひとつだ。ピアノ伴奏はステフェン・スウェディシュで、バッハのみ彼としばしば協演したジェルジ・シェベクが担当している。
6曲の中でもボッケリーニのソナタでのふくよかな音色を活かした、シンプルだがおおらかで格調の高いカンタービレは彼ならではの表現だ。一方ヴィヴァルディのホ短調ソナタはフルニエのオーケストラ伴奏のアレンジで知られているが、フルニエのロマンティシズムに溢れる解釈とは異なった、バロックの様式を踏まえたすっきりとした演奏が特徴で、前者とは好対照を成している。またロカテッリで聴かせるヴァイオリン顔負けの胸のすくようなシャープな切れ味の良さと剛毅さも心地よい。最後に置かれたバッハのガンバ・ソナタト短調での音楽的な強い推進力と個性はヴィオラ・ダ・ガンバで演奏するのとは異質のものだが、その語法には独特の説得力があり、この曲の可能性を広げた表現と言えるだろう。