本作は楽しませてくれるが、リリース以来あからさまに批判されてきた。評論家たちは、マイルスのような天才は古典的な曲(ようするに本作とはちがう音楽)でキャリアの幕を引くべきだと期待していたからだ。そして悲しいことに、イージー・モ・ビーのラップは、マイルスのすばらしさを称えてばかりいるリリックによって、“ありきたり”という言葉に新たな意味を加えているだけだ。とは言え、そうした欠点にもかかわらず本作はいまだに、このジャンルの多くのアーティストを打ちのめしている。その理由はなんと言っても、マイルスが最期まですばらしい演奏を聴かせてくれるからだ。
本作は名作ではないが、とことん楽しめるアルバムだ。この巨匠が人生の最期の日々に新たなジャンルに挑んだ音に、腰を下ろしてじっくりと耳を傾けようではないか。そして、もし彼が生きていたら、マッシヴ・アタックのようなバンドと共演して彼が鳴らしたかもしれない音に思いをはせよう。(Phil Brett, Amazon.co.uk)