京都の銭湯ガイド とても面白い企画です
★★★★☆
京都は戦災に遭っていませんので、昔ながらの風情をもった銭湯が街の至る所でしっかりと営業しています。レトロな雰囲気が残っていますので、観光の合間にひと風呂浴びるという旅行客も見受けます。らくたび文庫にもこの企画があるのは頷けます。
ハンディな特色ある京都の銭湯ガイドとなっていました。
冒頭に書かれている漫画家のグレゴリ青山さんの書き下ろし漫画の思い出は共通のものでした。彼女の思い出として、本文中で「芋松温泉」が登場しますが、このような銭湯は昭和の良き時代を彷彿とします。
有名な「船岡温泉」が最初に紹介されています。西陣の料理旅館の建物と装飾をそのまま生かした銭湯は全国的にも有名です。あくまで銭湯なのですが、ここを訪れるために京都に来られるのも悪くはありません。それだけの魅力は兼ね備えています。
それにしても、観光客としてエトランゼ気分で京都の銭湯を眺めてみると、タイル絵での装飾を始め、唐破風の門構え等、これだけ独特の形態は他の都市では絶対に見られない存在です。幸い、戦災に合う事もなく、大正、昭和初期の建物や装飾がそのまま現在まで受け継がれていることにより、その「特殊な空間」の体験の価値は大いにありだと思います。
紹介してあるのは、船岡温泉、錦湯、長者湯、柳湯、白川温泉、宝湯、松葉湯、天翔の湯大門、旭湯、五香湯などです。
社寺仏閣巡りという京都観光もいいですし、花鳥風月を追い求める京都もいいですが、近現代の風俗史や建築史の関心を持ちながら、銭湯巡りという少し違った京都観光もまた良いのではないでしょうか。