私も京都の中京に生まれ住んで50年になりました。本書に登場している銭湯のいくつかは当然のごとく入っておりますし、現在でも気分転換に浸かってくることもあります。
著者は京都生まれで、同志社大学卒業という経歴ですので、人一倍懐かしい気持ちを持って本書を世に出されたのでしょうね。
それにしても、観光客気分や異邦人、エトランゼ気分で京都の銭湯を眺めてみると、タイル絵での装飾を始め、唐破風の門構え等、これだけ独特の形態は他の都市では絶対に見られない存在です。幸い、戦災に合う事もなく、大正、昭和初期の建物や装飾がそのまま現在まで受け継がれていることにより、その「特殊な空間」の体験の価値、大いにあり、ですね。
有名な「船岡温泉」が最初に紹介されています。西陣の料理旅館の建物と装飾をそのまま生かした銭湯は全国的にも有名です。あくまで銭湯なのですが、ここを訪れるために京都に来られるのも悪くはありません。
京都観光のガイドブックとしての利用価値は勿論のこと、近現代の風俗史や建築史の参考にもなる良書です。なにより文章が分かりやすくて写真が多いのが最高ですね。