銭湯を大切にしなければ、という思いに駆られます
★★★★★
オールカラーで全国の100程の銭湯を取り上げています。その掲載された銭湯の半分はすでに廃業されており、まさしく遺産というべき存在になっています。
筆者は、20年以上かけて全国の銭湯を3000軒以上訪れたという町田忍氏ですから、その銭湯に対する熱い思いは文章からも写真からも伝わってきます。
本文や「思い出の銭湯」などのコラムからは、懐かしの昭和を思い起こす契機になるでしょうし、考現学的な要素や風俗史的な観点からも興味がつのる本だと思いました。建築史の観点からみても興味のあるテーマでしょうから。
京都の名物銭湯の「船岡温泉」が紹介されています。マジョリカ風のタイル絵での装飾を始め、唐破風の門構え等、これだけ独特の形態は他の都市では絶対に見られない存在です。戦災に合う事もなく、大正、昭和初期の建物や装飾がそのまま現在まで受け継がれていることにより、その「特殊な空間」の美が残っており、本書でもその魅力が綴られています。
そのすぐ近くにあり、廃業したあとカフェ「さらさ西陣」となった「藤の森湯」が紹介してあります。営業形態が変わった中で、往時の雰囲気を見事に残した例でしょう。
続いて掲載してある大阪の生野区にある「源ケ橋温泉」は、銭湯として全国初の登録有形文化財になったものです。看板上の「自由の女神像」を始め、内部のシャンデリア、ヨーロッパ風の天井など、和洋折衷のモダンな建物は一見の価値ありでした。
「キング・オブ・銭湯」と筆者が称号を贈った「大黒湯」は、社寺仏閣と見間違う外観で風格が漂っています。東京の銭湯建築様式の代表とも言える宮造りです。庶民の生活にとって大切な場所という捉え方で見れば合致するのでしょう。関東大震災の復興の中からこのような建築様式が生まれたようです。
心から後世に残したい銭湯の本
★★★★★
圧巻のタイル絵やペンキ絵、お湯用と水用が並んだ蛇口、昔ながらの広告ポスターなど、どれもレトロで味があります。
デザインを仕事にしている私にとって、これからかなり役立ちそうです。
置いてあるもの1点1点が発する歴史を感じさせる雰囲気があたたかく、どの銭湯も全体的なたたずまいに雰囲気があり、時間を忘れて見入ってしまいます。
また、日本の庶民文化を記録する写真と言葉は、どれも貴重なものばかりです。
心から後世に残したい銭湯の本。
銭湯にあまりなじみがない人たちにもオススメです。
在りし日の…
★★★★★
かつては町内に1軒はあった銭湯だが、そのうち24時間営業の健康ランドにとって代わられ、その健康ランドさえもが少子化、それから燃料代の高騰によってその存在さえもが危うくなってきている…。
この本はそんな日本各地の銭湯を取り上げた写真集である。「番台」「牛乳」そして「タイルの富士山」などが懐しく感じられる。流石に銭湯を数多く歩いてきた著者らしい一冊だ。内容に愛が感じられる。
しかし惜しいのはこの本の2軒に1軒が廃業してしまっているという点だ。「最近廃業したという電話を女将からもらった…」等のキャプションが何か悲しい。
さすが!町田さんの愛惜の念が伝わります。
★★★★★
町田さんの銭湯に対する愛惜の念が、本全体からじんわり伝わってきます。
写真が多いので見ていて楽しい。
特に、浴室やタイル絵、当時の広告ポスターだけでなく、脱衣所にある昔の体重計やロッカー、石けん入れや洗面器など、細かいところの写真も満載。写真の説明も詳細に解説されています。
昔の銭湯通いを思い出すと同時に、廃業した銭湯の多さに驚きました。
これから増えていくことのない昔ながらの銭湯の写真集だけに、価値のある1冊だと思います。
もう少し定価が安ければうれしかったが、日本全国の約100にもおよぶ銭湯を扱っているので納得の情報量です。判型もこれ以上大きかったら本棚に入らないので、この大きさで大満足。太鼓判です。
内容は良いが…
★★★☆☆
不満点が2つ。
定価(5800円)が高いことと、写真が小さいこと。
税込み6000円もするのだから、もっと大きな判型で出してほしかった。
写真も沢山あるのは良いのだが、一つ一つが小さくて迫力に欠ける。
資料的には眺めてて楽しいので星5つから上記2つを引いて3つの評価にします。
なお、現時点では書店などに定価での在庫があるようです。