新たな中小企業の姿が見えてくる。
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現場を歩いて、現場の声を聞いたからこそ言える言葉がたくさん詰まっている。
中小企業が集積している福井県の地場産業のなかから立ち上がってきた独自技術を持った企業、下請け型企業が新規技術を開発し新たな受注を確保した企業、地域の雇用と経済を支えかつ研究開発を続けている企業などなど数々の事例を通して、日本のものづくりの現場はまだまだ大丈夫。むしろものづくりこそがこれからの日本の道であると強いメッセージを発している。
海外に進出している多くの日本企業までも取材し、我々には見えにくくなっている日本企業の現状がつぶさに見えるのも評価したい。
さらに、最近の中小企業をめぐる定説は「廃業率が開業率を上回っており、このままでは中小企業はどんどん減少し大変なことになる」というような議論である。ところがそこには問題はないのではないかという疑問を著者は提示している。そこには、少子高齢化や資源問題と同じ考えが底流にあるという。
そもそも、中小企業は平均値で見て議論しても何の役にも立たない。二重構造といわれた時代のような脆弱で救わなければいけないとひとくくりで考えるものでもない。
むしろ、時代時代にあわせて変化し独自の技術を見につけてきた企業が生き残っているのだ、と悲観論に傾きがちなこの国の中にあって、この本は元気を与えてくれる。
新たな中小企業の姿が見えてくる。