でも読み出すと中々読ませる。とりわけ自らの身の置き方がすごく慎重でいい。例えばグローバリゼーションを巡る経済的議論って、左翼的な懐疑派と市場原理を重視した「ラディカルズ」に大きく二つに分けられる。ギデンズは市場原理の問題点を承知しつつもあえて後者を支持する。また文化的グローバリゼーションの問題でも、コスモポリタニズムと伝統主義(伝統に関する議論を受け入れないのが伝統主義!)の二分法でも、コスモポリタニズムにふさわしい形で伝統が生まれるだろうとしている。
ギデンズのグローバリゼーションに関する議論は終始一貫している。それは国家戦略といったように誰かが推し進めているものではなく、通信・交通技術の発達により進んだものであり、この自然な流れに逆らうことは出来ない、そして近代に成立した「国家」や「家族」といったものは形こそこれまでと一緒だけど中身は大きく変容し従来の考え方ではとらえられないという「貝殻制度」になってしまい、カタチよりも内容を考えなきゃならないのは民主主義(制度としての民主主義→より優れた民主主義という変化)も結婚(再生産と労働力の提供→ふたりの愛の証明!! という変化)も同じだ、としている。このあたりの議論は大雑把ながらも刺激的。
とにかく字がでかいんで読みやすい。ただ、もっと長めできちんとした例証のついたものも読みたいところ。
また確かに「グローバリゼーション」「リスク」「伝統」「家族」「民主主義」というのは、現代を説明するのには最適のキーワードとは言えるが、家族や民主主義は現状の変化を述べるだけで、彼の独特の議論がなされているとは思われない。
あと翻訳をした佐和さんはギデンズを崇拝しているのか、解説のところではギデンズをべた褒めしすぎである。もう少し相対化して述べるべきであっただろう。
本文内でギデンズ本人が自己陶酔している場面もあり、かなり見苦しい場面もある。
この本は入門書として読む方には、ギデンズというブランドにとらわれず、批判的に読んでほしい。