幼い高校生たちの恋と友情
★★★☆☆
期待して読んだ。
なぜなら、林真理子さんが母親の青春時代を描いた「本を読む女」が自分にとっては最も共感した本であるからだ。ご自身の自叙伝をモデルにした部分もありそうなこの本に対してはそれ以上に共感できるのではないかと思った。しかし、そうではなかった。時代の違いということもあるだろうが、一世代前の「本を読む女」の主役に比べて、「葡萄が目にしみる」の主役の世界は狭い。共学の進学校に進み友人にも恵まれているのに、幼い恋愛へのあこがれや、狭い範囲での女友達とのライバル関係、そのなかでの過剰な自意識に終始している。だからこそリアリティがあり、共感を呼ぶのだろうということはわかるのだが、少し欲求不満を感じた。
私自身も、高等女学校を母体とした高校ではなく、旧制中学を母体とした進学校を敢えて選んで進んだということがあるので、学校の文化などについて、ああわかるわかるという部分はある、だからこそ、恋愛の話があれだけ多くを占めているのってそういうものなんだろうか・・・・と思ってしまった。
最終章では、いつの間にか大学を卒業して東京でラジオ局に勤めている主人公が登場する。そこだけが、まるで一連のキャリアウーマン物を思わせる。
田舎の女の子が、進学校に進んで、大学に行って、ラジオのアナウンサーとして都会で働く・・・その原動力のようなものが、共学校でのたわいない恋愛への憧ればかりだとは考えたくないのだが。
切なくて涙がでる
★★★★★
あらゆることにコンプレックスを抱き、常に気持ちが揺れていたあのころ。作者自身も他作品で、「大人になってしまうのは悲しいこと」と言っていますが、これを読む度に「もう少女時代には戻れないんだな・・・」と切なくて切なくて胸が締め付けられます。季節の移ろいが効果的に描かれ、文面から風や緑の匂いまで伝わってきそうです。それがまたいっそう切なく、季節を体全体で感じていたあのころを思い出させてくれます。
学生時代(特に中学校)もてなかった女子へ!!!
★★★★☆
これって半自叙伝的な小説なんでしょうか?私も田舎の学校で目立たない少女でしたので、この本の主人公の感情が伝わってくるようでした。あんな人やこんな人と次々と恋愛!みたいな小説が多い中、こういう小説は地味な存在なのかもしれませんが、とてもいいお話だと思います。ただ学生時代モテモテだった人は「?」だと思います(笑)
林真理子氏の最高傑作
★★★★★
林真理子氏の最高傑作にして、青春小説の最高傑作です。
青春とは夢を見、夢破れて傷つくこと。
そんな青臭いテーマを見事な話に仕立て上げました。
舞台は林真理子氏の故郷山梨。
自らの高校時代をモデルにした話です。
愛することと愛されること。それが人生の一番の関心事だった頃の話。
主人公達の話す山梨弁が懐かしさとリアリティを醸し出しています。
ラスト、大人になり成功も手にいれ東京という華やかな街で出合った主人公と同級生岩永。
夢ではない本当の恋愛も経験し、昔のように些細なことで傷つくこともなくなった二人。
高級なフレンチレストランで臆することなく食事をし、高校生時代のやんちゃを忘れたかのように大人の会話を交わす。
これから読まれる方のために詳しくは書きませんが、その時に発する岩永君の言葉が素晴らしい。
そして誰もが大人にならなければならないことの残酷さ。
ラストは思わず涙してしまいました。
懐かしいアルバムを久方ぶりに開いて、ああこんな頃があったんだなあと溜息を吐いて再びアルバムを閉じる。
そんな思いにさせてくれます。
必読の作品です。
この本が心にしみる
★★★★★
田舎町の高校生の日常。狭い社会で暮らす高校生にとっては、些細な日常のひとつひとつがドラマになる。
大人になって分別を覚えてしまう前の、人間の生々しい感情がふんだんに盛り込まれていて読みながらどきどきしてしまいます。
きっと誰でも持っているであろう嫉妬とか嫌な自分とかを全部認めて一つの小説にしてしまう真理子さんを、私はとても偉い人だと思いました。