でも、今いろいろなバージョンが出版されている中、読み比べてみると…
このヘレン・バナーマンの絵によるお話が一番好きです。
何が良いかというと、それはなんといっても
作者のヘレン・バナーマンによる絵そのものです。
「訳者あとがき」によると、バナーマン夫人は夫とともに、
当時イギリスの植民地だったインドの奥地で、
伝染病予防などの仕事をしていましたが、
暑さになれない彼女の子供たちとは、
夏の間だけ離れて暮らさなければならなかったそうです。
それで、離れて暮らす子供たちを励ますためにと書き送った
絵手紙や手作りの絵本の中のひとつが、
この『ちびくろさんぼ』だったのだそうです。
そのことを知り、あらためて絵本をめくると。。
子供たちへの優しさと想いが伝わってくるようです。
なんてあたたかなお話と絵なのでしょう♪
とけたバターはインドでは「ギー」というそうで、
くろまんぼ(おかあさん)がホットケーキを作る場面の挿絵には、
バターが入った壷にちゃんと「TIGER GHI」なんて書いてあるところも
お気に入り★
そして、登場人物(トラまでも)の表情も生き生きとしていて素敵です。
また、ヘレン・バナーマンの希望どおりの、
子供の手の中におさまる小さなサイズの絵本ということも、
原作に忠実に作られているようで好感を持っています。
もちろん絶版のいきさつや、犬に置き換えたお話があることも知っていましたが、ぜひ自分が読んだままのお話を与えたかったので、見つけたときは感激しました。そして、見かけが安っぽく、適当な再話だろうと思いこんでいたあの古い本が、言葉の隅々まで実に原作に忠実な一冊だったことを発見して、二重の感激でした。
実家に帰ったときはまた古い方を読むことになるでしょうが、これからはこの小さな黄色い本を、どこに行くにもお供にすることになりそうです。