著者が批判しているのは性表現や性行動ではない。
ポルノに現れる「男性の女性に対する暴力の肯定」と
買春で形作られる「男性の女性に対する認識の歪み」が
その批判対象である。
ポルノ・買売春批判は「女性にとって」害であるとされ、
確かにそれはその通りではあるものの、
その問題設定の中ではポルノを享受する男性を敵視していると
感じられるものも多い。そのような論調では、どうしても男性
(また女性も)が反発を覚えるものである。
この本では「男性にとって」これらが何であるかを論じた上で
その存在を糾弾しており、ポルノ・買売春の存在を男性自身の
問題だと捉えている。
著者自身が男性であるからこその視点であろう。
このような本が数少ない現状が残念である。
この内容をもう少し端折るなり、やわらかくして新書などで
出たらよいと思う。