この本ではRatForというFortranの亜流の言語でサンプルコードが示されている.文法や演算子の説明は最初のほうで行われているのでFortranを知っている必要は全くないが,Cや手続き型言語を知らない人は読むのに苦労するかもしれない.C,C++,Javaなどに慣れていたり構文解析を勉強したことがあったりすれば読むのには苦労しないと思う.
僕が最近この本を読んでまず思ったのは
「どうして今まで誰も推薦してくれなかったの?K&Rと同じくらい有用じゃん…」
ということ.8年前にこの本を知っていたらどれほど楽ができたか…
ある程度プログラミングに慣れていないと難しくて読めない本ではあるが,「プログラミングと直結したアルゴリズム」や「プログラムの再利用に関する基本」を知るための本としてこれほど基本に重点を置いてまとめられた本は他にないと思う.
少々余談になるが,ソフトウェア開発においてはLinuxカーネルに代表されるバザールモデルの普及以外に本質的な進展が長い間行われていないことを痛感させられた.つまり,大昔に出版されたこの本は使用言語以外の点では全く色あせていない.
この本で著者等は例題を一つ一つこなしながら、よいプログラミングのアプローチとは何かを説明していきます。例題はunixでよく見るフィルターが主で、ファイルコピーから始まって文字の数え上げ、語の数え上げ、文字の置き換えと進み、やがては文字列検索、エディタ、フォーマッタ、マクロプロセッサへと達します。これらの例題がすべてかんで含むように説明されているため、基本だけではなく応用まで身に付けることができます。
言語はFortranですが、ratforプリプロセッサを通すことで、C言語に近い文法になっています。C言語しか知らない人でも特に違和感は無いでしょう。
濃い内容に加えて訳がすばらしいのも読みやすさを手伝っています。最近のやたら分厚くて読者を押しつぶさんばかりの量なのに何を言っているのかわかりにくい本とは一線を画します。