しかし、この本は、一見すると、むしろ、暗く重い雰囲気を持っています。
内容としては、ロバータ・マーティン(ピアノ・ゴスペルのスタイルを創った重要人物の一人で、音楽出版事業者としても成功を収めた人)の葬儀に、多くの貧しい人たちが参列したというエピソードから始まり、主にゴスペル歌手の実録、証言を通して、当時の社会状況、ゴスペル音楽のポピュラー音楽への影響の大きさ、そして何よりゴスペルという音楽が歌い手自身・一般の人々の中にどの様に生きていたのか(現在も生きているのか)等を紹介しています。
よって、ずいぶんと辛い話が多く、ただ、軽く、楽しくゴスペルを聴きたい、歌いたいという方が読むと、むしろ差し障りがあるのかもしれません。
しかし逆に、ゴスペルのことを少しでも深く知ろうとした場合には、早い時期に出版されたために、現在では、絶対に避けて通ることの出来ない本となっています。(内容に関して批判も有る様なので、単純に全部を信じ込むのは危険ですが。)
先ほど、暗い、重いと書きましたが、読み進むうちに、その暗い中に光が差し込んでくるのを感じられるのではないかと思います。同じゴスペルの曲を聴いたとしても、この本を読む前と、読んだ後では、少し違って聞こえるのではないかと思います。
確かに読み辛い点は有りますが、結論としては、やはり、おすすめの本です。
(読み辛さは、実際にCDを聴きながら読むことで幾分緩和されると思います。古いゴスペルを聴かれたことのない方には、最初の1枚目は、個人的にですがキャラヴァンズがお勧めです)